研究課題/領域番号 |
24760334
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋本 智昭 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90515115)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 制御系設計 / 制御理論 / システム理論 / 偏微分方程式 / 最適化 |
研究概要 |
モデル予測制御とは,有限評価区間の最適制御問題を時間が進むごとに評価区間を移動させながら,逐次その問題を解くことによって,継続的に最適フィードバック制御を実現する手法である.近年,非線形常微分方程式で記述されるシステムモデルに対するモデル予測制御手法は実応用が可能な段階にまで十分に発展している.一方で,非線形偏微分方程式で記述されるシステムモデルに対するモデル予測制御問題は未開拓な研究領域であった.これを背景にして,本年度の研究では,高次元化された空間変数及び状態変数を用いて,一般化された非線形偏微分方程式で記述される制御対象モデルを導入し,そのモデル予測制御問題の定式化を行った.また,変分法を用いて,停留条件と呼ばれる,評価関数が最小となるために満たすべき必要条件を解析的に導出した.導出された停留条件が適当な仮定のもとでは,未知変数に関してシンプルな構造をもつことに着目して,既存の手法より効率的な数値解法を構築した.さらに,最適性誤差と計算負荷の間にトレードオフの関係があることを定理により証明した.これにより,設計要求に応じて,最適化計算の反復回数を解析的に定めることが可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画では,空間変数及び状態変数の高次元化を行い,状態変数及び入力変数に関する拘束条件を導入し,一般化された放物型非線形偏微分方程式のモデル予測制御問題の定式化を行い,停留条件と呼ばれる評価関数が最小となるための必要条件を解析的に導出し,その数値解法を構築することを目的としていた.これらに対して,すべて計画通りに研究が進行し,順調に研究成果を挙げることができた.本年度の研究成果では,非常に幅広いクラスの非線形偏微分方程式に適用可能なモデル予測制御系設計手法の新しい枠組みを構築した.この方法論を流体システムなど,様々な非線形偏微分方程式で記述される制御対象に応用していくことが次年度以降の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに構築された非線形偏微分方程式のモデル予測制御系設計法に基づいて,非圧縮性流体の運動を記述するNavier-Stokes方程式のモデル予測制御系設計手法を構築する予定である.Navier-Stokes方程式は運動量保存式と質量保存式から構成されており,運動量保存式は放物型非線形偏微分方程式で記述されるが,圧力を表す未知変数を含んでいる.この圧力変数は質量保存式(拘束条件)によって決定される未知パラメータである.Navier-Stokes方程式の数値解法の代表例としてSMAC法(Simplified Marker and Cell method)がある.SMAC法とは,質量保存式が満足されるように逐次未知圧力パラメータをアップデートしながら,運動量保存式を解く計算方法である.質量保存式の取扱いが特殊であるため,前年度までに構築されたモデル予測制御系設計手法が単純に適用できるわけではない.そこで,まずNavier-Stokes方程式のモデル予測制御問題を適切に定式化し,解析的に停留条件を導出する.得られた停留条件に対してNavier-Stokes方程式の数値解法でよく用いられるスタッガードメッシュ(staggered grid)を採用し,その差分化を行う.導出された停留条件において,共状態に関する時間発展方程式とその拘束条件が,Navier-Stokes方程式の運動量保存式と質量保存式と各々双対な関係であることに着目して,SMAC法と前年度に構築された数値解法を組み合わせることによって,Navier-Stokes方程式のモデル予測制御問題を解くための新しい数値解法を構築する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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