平成24年度から平成25年度にかけて,「衛星搭載型合成開口レーダーによる海岸浸食域の推定手法の確立」と「衛星搭載型合成開口レーダーによる海岸浸食域の時系列変化の評価」の2つのテーマについて研究を行った。研究対象地域として選定した,北海道十勝海岸・鵡川海岸,新潟県糸魚川海岸,鳥取県鳥取砂丘海岸,千葉県九十九里浜海岸,静岡県遠州灘海岸,鹿児島県吹上浜海岸・神ノ川海岸および宮崎県日向灘海岸における砂浜海岸を観測した70シーンに上る地球資源衛星1号(JERS-1)および陸域観測技術衛星(ALOS)のL-bandの合成開口レーダー(SAR)データから,砂浜海岸の汀線をトレースする手法について検討し,海岸の地理的な条件や観測時の気象条件ならびにL-band SARデータの後方散乱係数の特徴についても分析することができた。また、L-band SARから自動的に汀線をトレースするプログラムの開発も行うことができた。さらに、L-band SARを利用したインターフェロメトリー処理により空間的な地盤変動量を解析し、砂浜海岸の海岸汀線の後退と地盤沈下との関係性についても評価することができた。なお、SAR画像からトレースした海岸汀線は、同時期に観測されたJERS-1/VNIRやALOS/AVNIR-2の可視・近赤外画像および航空写真を利用することで、その精度検証を行っている。 研究成果として,既存の測量成果や航空写真を利用する海岸汀線を把握する方法とは異なり,L-band SARからは広域にわたる砂浜海岸の時系列変化を評価できるだけでなく,地盤変動量も同時に把握できる可能性を見出した。また,新たに打ち上げられる陸域観測技術衛星2号(ALOS-2)に搭載されるPALSAR-2を利用し,海外の海岸汀線の時系列変化も評価できる可能性もあることから,研究の発展性が今後も期待できる。
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