研究課題/領域番号 |
24760703
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
糟谷 直宏 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (20390635)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマ・核融合 / 磁場閉じ込め / 乱流 / トーラス / 数値診断 |
研究実績の概要 |
本研究はトロイダル磁場閉じ込めプラズマにおける乱流構造形成機構とその輸送への寄与の定量的理解を目的とする。乱流輸送過程の理解のためにはプラズマ中に存在する巨視的モード、メゾスケール構造、微視的乱流のダイナミクスを同時に同定することが重要で、プラズマ乱流の大域的シミュレーションから機構解明を行う。特に本研究ではヘリカルプラズマという3次元的に磁場が分布する系で、微視的乱流が自己無撞着に形成する乱流構造の様相を探る。そのためにモデルの発展、3次元平衡磁場配位の効果、輸送現象の物理的理解というそれぞれの項目について研究を推進した。モデルの発展に関しては、有限軌道幅効果を取り込んだジャイロ流体モデルの理解を進めた。円筒形プラズマにおけるイオン温度勾配不安定性モードを対象として、実験パラメータを用いた線形成長率の評価を行った。そして複数のモデル間の比較を行った。3次元平衡磁場配位の効果に関しては、昨年度導入したヘリカル系の平衡磁場配位を取り入れ可能なMHDコードを用いて高ベータプラズマにおける非線形飽和を得た。そしてそのダイナミクスを視覚化するための環境整備を行った。輸送現象の物理的理解に関しては、昨年度に引き続きヘリカルプラズマにおけるドリフト交換型モード乱流コードを用いて、プラズマ中心部のソースに周期的変化を加えて圧力分布の応答をみるシミュレーションを行った。加熱ソース変化の繰り返しを重ね合わせることで乱雑成分を除去し、特徴的な変化が抽出できる。その輸送の伝播にはモード間の非線形結合によるエネルギー再分配と半径方向に分布したモードの逐次的応答が重要な役割を果たしていることがわかった。そして圧力勾配の応答が熱流束の応答より先行するので、熱流束と圧力勾配の関係にヒステリシスが現れる。このように本研究ではプラズマ中に存在する乱流輸送現象について多様な面から確実に研究を進展させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、数値シミュレーションを通じて、プラズマ中に存在する巨視的モード、メゾスケール構造、微視的乱流のダイナミクスを同時に同定することで、乱流輸送過程の理解を進展することにある。本年度は流体モデルを用いて、半径方向に分布するモード間の非線形結合機構を解析することで、乱流を通じた輸送現象の物理機構を解明することができた。さらに対象とする高温プラズマにおいて重要となる、有限軌道幅効果を取り込んだモデル、3次元平衡磁場配位の効果についてもそれぞれ成果を得ることができた。よって、研究の3年目も順調に進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は既存のコードを用いて、プラズマ乱流の動的応答について物理的理解を得ることができた。その理解をさらに深めるために、シミュレーション条件を変化させることで飽和状態の依存性を調べる。また、そこで現れる乱流構造の形成機構について詳細な解析を行う。これらにより、モード間エネルギー移送を通じた輸送伝達について物理機構をまとめる。さらに、3次元磁場配位を導入したシミュレーションから得た乱流ダイナミクスに対して、これまで我々が開発してきた乱流計測シミュレータによる数値診断を適用する。得られた乱流場データを乱流計測シミュレータに取り入れ、実験計測を模擬した数値診断を行う。そして、形成される乱流構造が実験計測でいかに観測されるか提示し、形成機構の理解を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度支出を予定していた海外出張旅費は、別経費より支出可能となったので、当研究費から支出する必要がなくなった。また論文掲載料請求も次年度となった。これらの理由により表記の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度掲載および掲載決定となった論文掲載料として使用する。
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