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2012 年度 実施状況報告書

島嶼の生物進化を駆動する第四のメカニズム:人工島島嶼群のクモを例として

研究課題

研究課題/領域番号 24770013
研究種目

若手研究(B)

研究機関宮城教育大学

研究代表者

林 守人  宮城教育大学, 環境教育実践研究センター, 研究員 (70625037)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード国際研究者交流 / サラグモ / アシナガグモ / 島嶼生態学 / 進化生態学
研究概要

島嶼の初期集団が持つ独特の形質を捉えるために,形成年代が100年内という英国中東部の人工島島嶼群のクモ群集を用いてフィールドワークと室内実験を同時に進めた.その結果,島嶼部と非島嶼部のクモ群集において各活動レベルの差が検出され,島嶼の群集はより活動的である事が明らかになった.次に,この初期の活動レベルがその後どのように変化するのか,という点に着目し島の年代間における活動レベルの解析を行ったところ,島嶼の年代が古くなるに従い活動レベルが低下する事が分かった.続いて,この活動レベルの変化が人工島への移入によって促される種の置換によるものなのか,それとも進化なのかという点を明らかにするために,種構成の解析を行った.その結果各年代の島において種構成の偏りはほとんど観察されず,この活動レベルの差は,各地点の種構成の違いによってもたらされたものでは無い事が明らかになった.一般的に海洋上の島嶼は古く,初期集団を観測する事は難しい.しかし本計画を行う英国中東部の自然保護区Attenborough Nature Reserveでは湖上の人口島にアクセスする事が容易であり,島嶼の初期群集が豊富なリプリケートと共に観測可能である.このような条件下におかれた群集は,行動の様な比較的速い速度で進化する可能性が高い形質を観測する際に利用価値が高い.本研究ではこれまでの研究で形態的形質からの報告が主だった分散能力に関して,行動面からアプローチをかける事にも試みる予定であり,今後の解析結果に注目している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本プロジェクトは当初の計画通り進んでいる.ターゲットとしていた島嶼初期集団の選択的形質が早い段階で観測出来た事により,現段階では計画の軌道修正等の必要が無い順調な滑り出しとなった.現在行動時間に関する解析は最終確認に入っておりこの作業も間もなく完了する.計画の副産物として期待されていたクモの分散能力のデータも計画段階で立てた仮説に沿っている事から予定通り解析に入る事が出来そうである.本計画は,同モデルを用いた前回の学振におけるプロジェクトでのフィードバックを盛り込んで計画されているため,作業工程が確立されており,どの作業でどの位時間が必要かあらかじめ分かっている.また自然保護局との協力関係や研究に対する自然保護センター及びボランティアグループの理解がすでに得られている事も作業の効率化につながっている.加えて今年からはAttenborough自然保護センターのマネージメントミーティングにも参加する事になり,実験区域のかく乱等が起こることの無いよう定期的なチェックとリクエストが可能になった点も本プロジェクトにとって重要である.

今後の研究の推進方策

クモの行動時間に関する解析の確認作業を終え次第,分散能力の解析を行う.他の行動形質を含めた測定項目は申請時の計画でも述べた通り後回しにし,予定通り二年目中旬から論文執筆を行う.またこの一年の結果を概観すると,メインテーマ以外の各プレ解析のアウトプットも興味深い.もっとも相対的な重要性を考えると,メインテーマである島嶼進化の第四ファクターが抜きに出て分野内での重要度が高く,続いて分散能力に関する研究,その他という順序になると予測されるが,第四ファクターの研究のヒントになったデータも元々はその他にカテゴリーされていた事を考えると,その他のデータが持つポテンシャルも大切にしたい.そこでメインテーマがこのまま順調に進む場合は,さらなるフィールドワークを組み込む.ただし使う時間を最小限に留めるため,今回は作業に更なる改良を加えD-bagという巨大な掃除機型の採集器具をテスト導入する.世界最小規模の群島で瞬時にコドラートのサンプルを網羅出来るこの手法は効率が極めて高く,今後二年間の計画にも貢献が期待できる.

次年度の研究費の使用計画

本プロジェクトの要は2キロ四方に収まる人工島群にある.従って,研究は箱庭的であり,一般的な島嶼研究にみられる様な大規模な島間の移動は必要としない.しかし,研究サイト自体が英国にあるため日英の往復旅費及び滞在費が計画の根幹を支える.従って,交付申請書の方針通り科研費は基本的に滞在費,旅費として使用する.現実問題として入国が大幅に厳しくなったイギリスにおいて英国ビザを更新し研究を効率化する為にはHome Officeに十分な滞在費がある事を示す必要があり,科研費を滞在費として使う事が出来ると先方に伝えられる恩恵はとても大きい.フィールドワークで使用するボート,パドル,ライフジャケット等は自然保護センターから借用し,先に述べたD-bag等サンプリング用の特殊機材はプリマス大学のGorge Thomas博士グループから借用する事が決まっている.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 その他

すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)

  • [学会発表] 帆走行動と耐水性にみる飛行グモの進化的背景2013

    • 著者名/発表者名
      林 守人
    • 学会等名
      日本蜘蛛学会第45回大会
    • 発表場所
      高知大学(高知県)
    • 年月日
      20130824-20130825
  • [学会発表] Sink or Sail: Aquatic behaviour of spiders and implications for dispersal

    • 著者名/発表者名
      Morito Hayashi
    • 学会等名
      Evolutionary Group Meeting, Naturalis Biodiversity Center, Leiden
    • 発表場所
      自然史博物館,ライデン,オランダ
    • 招待講演
  • [学会発表] Evolution of spider sailing posture on water and the implications for ecosystems trough aerial dispersal

    • 著者名/発表者名
      Morito Hayashi
    • 学会等名
      Monday Seminar, University of the Philippines Diliman
    • 発表場所
      フィリピン大学ディリマン校,マニラ,フィリピン
    • 招待講演
  • [学会発表] Miniature island biology: Impact of sailing spiders found in artificial islands

    • 著者名/発表者名
      Morito Hayashi
    • 学会等名
      The Museum of Natural History, Evolutionary Education Forum, University of the Philippines Los Banos
    • 発表場所
      フィリピン大学ロスバノス校,ラグーナ,フィリピン
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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