研究課題/領域番号 |
24770127
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
實松 史幸 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (80381094)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞骨格 / ラッフル膜 / Rac / ホスファチジン酸 |
研究概要 |
本研究は非古典的Rac活性化分子であるDOCK180(DOCK1)及びDOCK5の機能とその時空間的制御機構を明らかにすることを目的とした。DOCK1及びDOCK5の遺伝子欠損マウスより初代線維芽細胞(MEF)を単離し解析を行った結果、以下の様な成果を得た。 1)DOCK1はDorsal ruffle形成に必須であるのに対し、DOCK5はDorsal ruffle形成には必要なかった。また、それぞれのGFP融合タンパク質を用いることで、DOCK1及びDOCK5のDorsal ruffle部位への集積度合いを定量測定した。その結果、DOCK1はDorsal ruffle部位に特異的に集積するのに対し、DOCK5はDorsal ruffle部位に集積しないことがわかった。2)DOCK1の様々な変異体を用いて集積度合いの定量測定を行ったところ、DOCK1のC末254残基を欠損させるとDorsal ruffle部位に集積しないことがわかった。3)DOCK1とDOCK5のアミノ酸比較解析の結果、DOCK1はDOCK5と違いC末側にpolybasic部位を持つことを持ち、その部位を介してイノシトールリン脂質のホスファチジン酸(PA)と結合することを見出した。4)チロシンキナーゼ受容体の下流で、PLDが活性化してPAを産生することがDorsal ruffle形成に重要であることを阻害剤およびPLD1/2 KOマウスの解析より見出した。 以上より、DOCK1とホスファチジン酸の会合により細胞膜へと移行するDOCK1の局在化機構がDorsal ruffle形成に重要であることを見出し、DOCK1の新たな時空間的制御機構を解明することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
チロシンキナーゼ受容体の下流で、PLDがPAを産生してRac活性化分子であるDOCK1を細胞膜に局在化させることでDorsal ruffleを形成するというDOCK1の新しい局在化機構を明らかとした(JBC, 2013)。 また、制御化合物のスクリーニング、DOCK1のがん浸潤機構への関与等、その他の項目に関しても研究は順調に進行しており、このシグナル系の包括的理解に向け、計画以上の進展がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進行しており、多くの成果が得られている。次年度は最終年度であり、この成果をさらに発展させ、がん浸潤機構等個体内におけるDOCK1の新たな関与を示したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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