研究課題
若手研究(B)
アルツハイマー病の原因物質として考えられているアミロイドβペプチド(Aβ)に対して、その前駆体タンパク質であるAPPのリン酸化と脱リン酸化を制御することによってAβの産生量を低下させ、産生酵素であるβおよびγセクレターゼの他の基質を阻害しない副作用の少ない新しいアルツハイマー病治療薬を目指し、株化細胞とiPS細胞を用いて検討した。・APPの主要なリン酸化キナーゼと脱リン酸化ホスファターゼの同定これまでの研究から、APPに対する主要なキナーゼは、CDK5(cyclin-dependent kinase 5)やJNK(c-Jun N-terminal kinase)、GSK-3β(glycogen synthase kinase 3β)、DYRK1A(dual-specificity tyrosine phosphorylation-regulated kinase 1A)などが候補に挙げられている。ダウン症患者がアルツハイマー病を発症しやすいことなどから、21番染色体に存在するキナーゼやホスファターゼ、またはそれらの制御分子に着目した。培養細胞に着目した分子を過剰発現させ、APPのリン酸化を特異的抗体によって検出した。ホスファターゼの内因性調節分子の過剰に発現させるとAPPのリン酸化が亢進されている結果を得ることができた。・ヒトiPS細胞に対する神経細胞への分化方法の開発これまでの研究でヒトiPS細胞を分化させた神経細胞において、Aβを測定する系を確立しているが、さらにこの測定系を改良するために、ヒトiPS細胞を培養して神経細胞へ分化することを試みている。
3: やや遅れている
iPS細胞から神経細胞への分化方法が予定通りに進んでいないため。
・APPのリン酸化と脱リン酸化の時間的・空間的影響の解明APPとセクレターゼの局在が重要視されている。APPのリン酸化によってAPPの細胞内局在が変わり、それに伴ってγセクレターゼ活性が変化する可能性も否定できない。そこで、キナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤処理におけるAPPの細胞内局在を免疫染色法で確認する。局在に著しい変化が見られない場合は、野生型APP、恒常的非リン酸化APP(668番目のアミノ酸残基ThrをAlaに置換)、恒常的リン酸化APP(同ThrをAspに置換)を過剰発現する細胞から膜画分を調整し、cell-free assayでγセクレターゼ活性を直接的に測定する。内在性の野生型APPが結果に影響を大きく及ぼす場合、APP遺伝子欠損マウス由来の胎児線維芽細胞を使用する。・同定したキナーゼまたはホファターゼの阻害剤処理時のAβ量の測定引き続き、責任キナーゼとホスファターゼのスクリーニングを行う。その後、同定したキナーゼやホスファターゼの阻害剤を用いて、ヒトiPS細胞を分化させた神経細胞におけるAβ量を測定する。この結果を基に、ヒトの神経細胞における有効性を評価すると同時に、用量反応曲線を描き、アルツハイマー病モデルマウスへの投与量を考察する。また、これまでと同様に、APPのリン酸化をimmunoblot法で定量し、Aβ量との相関を調べる。
大型の機器は揃っているので、研究費のほとんどを消耗品に使用する。学会参加費として旅費を計上している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Scientific Reports
巻: 3 ページ: 1472
10.1038/srep01472
臨床神経学
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