一酸化窒素(NO)に関連した分子の濃度の喘息モデルマウスの肺組織における変化を明らかにするためにNOxの一部であるNO2-など個々の分子の変化を測定したが、個体間のバラツキなどがあり統計的有意になるほどの変化は検出できなかった。喘息モデルマウスの作成成功は肺におけるアルギナーゼタンパク質の発現上昇によって確認している。 喘息モデルマウスの肺におけるシステイン残基のニトロソ化修飾の量が変化するタンパク質をさらに同定することを試みた。ビオチン交換法を行う際の条件を変えたり、免疫沈降・イムノブロッティングの際に用いる抗体を変えるなどした。同定されたタンパク質については、複数のマウスの肺サンプルを用いて再現性を確認した。単離されたニトロソ化タンパク質の中には現在まで明らかに喘息と関連すると既に知られているタンパク質などは見出されなかったが、さらなる検討が必要である。 単離したタンパク質の1つは、Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase (GAPDH) であった。このタンパク質は培養細胞などですでにニトロソ化されていると知られているタンパク質であり、ビオチン交換法がうまく機能したことを証明している。GAPDHのニトロソ化レベルは喘息においてやや上昇していた。 また、喘息を含めた炎症において重要な役割を果たすと知られている転写因子であるNF-kBについてニトロソ化レベルの変化を調べた。NF-kBの生理的なニトロソ化レベルはマウス1匹分の肺からではビオチン交換法の検出感度限界ぎりぎりでありバラツキが大きいので、複数のマウスに由来する高濃度の肺サンプルで追試を行う必要があるが、NF-kBのニトロソ化レベルは喘息においてやや上昇しているようであった。
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