研究課題
HCV患者への標準治療に対する治療無効群(NVR)118例と治療有効群(VR)140例を用いたGWASを実施し、(1) 単点解析でP<0.0001となった18か所のSNP、および(2) KEGGデータベースを用いてIL28B遺伝子、RIG-I遺伝子のそれぞれに対する遺伝子パスウェイ解析から検出した38か所のSNP、をReplication解析の候補SNPに選択した。Replication解析では、GWASとは独立に収集したNVR群203例とVR群434例を用いた。解析の結果、ポジティブコントロールとして解析した既知の関連SNPであるIL28B遺伝子中のrs8099917からはP=2.52×10-42という有意な関連が検出された。しかしながら、新規候補遺伝子領域を同定することはできなかった。HCV患者に対する標準治療の副作用の一つである好中球減少に対して、好中球量が1,000以上となる群302例と、750以下となる群114例とで1段階目のGWASを実施し、さらに顕著な好中球減少例(好中球量600以下)となる群50例とで2段階目のGWASを実施した。1段階目から2段階目のGWASにおいて、オッズ比が強まった135か所のSNPを対象として、Replication解析を実施した。Replication解析では、GWASとは独立に収集した好中球量が600以下となる群55例と、1,000以上となる群381例を用いた。この結果、P=4.49×10-7、OR=2.17となるSNPを同定した。加えて、投薬開始時(0週時)の好中球量で補正をした結果においても、P=1.39×10-4、OR=3.96となることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した(1) HCV患者に対する治療応答性に関わる遺伝子、および(2) HCVの標準治療に対する副作用の一つである好中球減少に関わる遺伝子を対象とした実験および統計解析を昨年度中に完了することができた。
HCV患者に対する標準治療の副作用の一つである貧血については、3g以上の貧血あり群63例と3g以下の貧血なし群142例を対象として、SNP6.0 arrayを用いたゲノムワイドSNP解析を追加して実施した。これまでにデータ取得済みの、貧血あり群91例と貧血なし群193例と合わせたGWASを実施し、選択された候補SNPを対象としたReplication解析を実施することを今後の目標とする。また、HCV患者に対する治療応答性に関わる遺伝子に関しては、IL28B遺伝子以外の新規関連遺伝子を発見することができなかった。現在では、HCV患者に対する治療方法が変わっており、新しい治療法に対する治療応答性や副作用に関わる遺伝要因を探索する研究を新たに立ち上げる必要がある。なお、HCVの標準治療に対する副作用の一つである好中球減少に関わる遺伝子については、新規の関連遺伝子を同定することができた。平成25年度中に、論文報告をする予定である。
HCV患者に対する標準治療の副作用の一つである貧血を対象としたGWASで検出された候補遺伝子領域を対象としたReplication解析を実施する。96か所のSNPを対象としたReplication解析に必要となる試薬、消耗品およびオリゴDNAの合成費用として次年度研究費を使用する予定である。
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