研究課題
これまでにLPCAT1という酵素を欠損したマウスを用いて次のことを明らかにしている。1.欠損マウスでDPPCというリン脂質の量が減少していること。2.このマウスの肺サーファクタントの機能が低いこと。3.このマウスが急性肺障害に対して高い感受性を持つこと。このような変化に関して、より詳細にメカニズムを明らかにするために次のような実験を行った。1.培養細胞にLPCAT1と類似した機能を持つ様々な酵素を発現させ、脂質組成に与える影響を調べた。2.これらの変動が生体レベルの脂質組成も説明するかを調べた。3.人工肺サーファクタントのDPPCを減らした場合にLPCAT1欠損マウスの肺サーファクタントのように機能が低下するか。4.LPCAT1欠損マウスにDPPCを投与すると急性肺障害時の肺の機能が回復するか。これらをもとに次の結果を得た。1.生体膜の主要なリン脂質であるPCという分子に関して、LPAATとLPCATという酵素活性がPCに含まれる脂肪酸の組成を調節し、脂肪酸ごとに各酵素活性の寄与が異なることを明らかにした。2.また、これらの活性を生体で調べると、この調節機構は生体レベルでも機能していることがわかった。3.人工肺サーファクタントを作成した場合、DPPCというリン脂質がその正常な機能に必要で、LPCAT1欠損マウスではこれが少ないせいで肺サーファクタント機能が低下していると推察された。4.LPCAT1欠損マウスが急性肺障害を起こす前の段階で見られる肺機能の低下がDPPCの投与で改善することがわかった。これらの結果をまとめて、新しい脂質組成の概念として提唱するとともに、LPCAT1を例にそれが生体で正しく維持されることの重要性をCell Metabolismという雑誌に論文として報告した。
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http://www.ncgmlipidsp.jp/