研究課題
若手研究(B)
若年性骨髄単球性白血病(Juvenile myelomonocytic leukemia; JMML)はまれな小児特有の白血病である。JMMLの原因遺伝子として、PTPN11、NRAS、KRAS、NF1、CBLの変異が知られている。これらの遺伝子変異は体細胞変異(somatic mutation)であるが、同じ遺伝子の生殖細胞系列変異(germline mutation)がNoonan 症候群(PTPN11)、cardio-facio-cutaneous(CFC)症候群(RAS)、germline CBL 症候群(CBL)などの先天性遺伝疾患の原因であることが近年相次いで明らかとなった。我々は、JMML遺伝子診断例について、その遺伝子変異が血液細胞のみに認められる体細胞変異(somatic mutation)であるか、そのほかの細胞(爪・毛髪・口腔粘膜細胞など)にも一律に変異が認められる生殖細胞系列変異(germline mutation)であるか確認するため、JMMLと診断された患者の血液細胞以外の検体(爪・毛髪・口腔粘膜)由来のDNAにおける遺伝子変異の解析を行ったところ、偶然にも世界初となる2例のoncogenic NRAS mutationの体細胞モザイク症例を発見した。平成24年度中に、この2症例についてサンガー法、TAクローニング、パイロシークエンス法により統合的に解析し、英文誌上で報告した(Doisaki S, et.al., Blood 2012)。また、新たに約20例のJMML患者のgermline変異解析用検体(爪・口腔粘膜由来DNA)を収集し、サンガー法・パイロシークエンス法による解析を実施したところ、さらに2例(合計4例)のNRAS体細胞モザイク症例の同定に成功した。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度中に、世界初のNRAS体細胞モザイクを有するJMML2症例についてサンガー法、TAクローニング、パイロシークエンス法により統合的に解析し、一流英文誌上で報告することが出来た(Doisaki S, et.al., Blood 2012)。また、新たに約20例のJMML患者のgermline変異解析用検体(爪・口腔粘膜由来DNA)を収集し、サンガー法・パイロシークエンス法による解析を実施したところ、さらに2例(合計4例)のNRAS体細胞モザイク症例の同定に成功している。平成25年度以降には、さらに多くの症例に対して網羅的解析を行うことが可能と見込まれる。平成24年時点での達成度としては、おおむね順調に進展していると思われる。
研究計画時点では、低頻度アリルの体細胞モザイク症例を同定する目的でPCRアンプリコンシークエンスによるディープシークエンスを計画していたが、申請者らの研究で新たに新規遺伝子変異がRAS pathway遺伝子変異に合併するJMML症例があることが明らかとなった(Nature Genetics, in press)ことから、体細胞モザイクの解析においても複数の遺伝子をディープシークエンスすることが必要となった。PCRアンプリコンシークエンスよりもさらに効率的に複数遺伝子のディープシークエンスを行うことを目的として、アジレント社SureSelectを用いた、JMML関連遺伝子群を捕捉したのち次世代シークエンサーで解析を行う実験系を構築中であり、平成25年度内に運用可能となる予定である。本実験系を用いた網羅的解析により、サンガー法では見いだせなかった低頻度アリルの体細胞モザイク症例の同定が可能となるとともに、体細胞モザイクの存在がJMML患者の臨床像・予後に与える影響について詳細に検討することが可能になると予想される。すでに収集した約20例のJMML患者germline検体について解析するとともに、平成25年度も継続してJMML患者をはじめとする小児骨髄系造血器腫瘍患者のgermline検体(爪・口腔粘膜など)を収集し、解析を行う予定である。
サンガーシークエンス、パイロシークエンス、ターゲットディープシークエンスに用いる消耗品・物品費として60万円、研究成果の学会発表のための旅費に30万円、その他に10万円の使用を計画している。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (20件) (うち査読あり 20件) 学会発表 (1件)
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