研究課題/領域番号 |
24791308
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中村 優子 広島大学, 大学病院, 医科診療医 (40598984)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ガドキセト酸ナトリウム / 肝臓MRI / 抗癌剤 |
研究概要 |
ガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA 以下EOB)造影肝MRI検査は,現在肝腫瘍の診断に不可欠となっている。EOBは肝細胞内へ膜トランスポータにより取り込まれるが,一部の薬物はこのトランスポータを抑制することが知られており,このような薬物を投与された患者ではEOB造影肝MRIの診断能が低下する可能性がある。本研究では抗癌剤等の薬物投与によるEOB造影肝MRIの診断能の変化を動物実験および臨床研究により確認することを目的とし,特に申請者は乳癌患者に使用されるラパチニブ(チロシンキナーゼ阻害剤)がEOBの肝細胞への取り込みを阻害する可能性について症例報告をしていたため,ラパチニブを中心に薬物がMR画像へ与える影響を検討することとした。 本年度はラットを用いた検討を開始した。ラパチニブを投与したラット(ラパチニブ群)とコントロール群(溶媒のみを投与したラット)を準備し,EOB造影MRI撮影を行った。MRI撮影後,病理学的検索を目的にラットを屠殺し,病理医の指導のもと病理学的検索を行った。ラパチニブ群,コントロール群 それぞれ5匹ずつ検討を行い,動物実験そのものは終了とした。 臨床検討は,研究協力者である広島大学乳腺外科の協力のもの,ラパチニブによる化学療法を施行されている患者にEOB造影MRIを実施する予定として,現在症例収集中である。 また上述のごとく,EOB造影MRI画像の評価にはdrug-drug ineractionの考慮が必要であると考えられたため,第98回北米放射線学会にて肝細胞トランスポータの面からEOB造影MRI画像への影響につきまとめた教育演題の発表を行い,本発表にてCertificate of Meritを受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験での検討については,実験そのものは終了することができた。またこの検討に関し,現在論文を作成し,投稿中であるため,動物実験に関しては現在までおおむね順調に進展していると考える。 臨床検討に関しては,症例が予想以上に収集できていないが,来年度も引き続き症例収集を行なう予定である。 細胞株での検討は,現時点では着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験に関しては,すでに論文を投稿中であるため,論文の採択を目指す。 臨床検討に関しては,症例収集に難渋している。難渋する理由として,ラパチニブ治療が行われている患者の絶対数が少ないこと,またラパチニブが投与されている患者はそもそも肝転移の有無が治療方針の決定に反映されないような状態(全身に転移が多発した状態)である,などがあげられる。来年度も症例蓄積が進まないようであれば,臨床検討は断念せざるを得ない可能性もある。 細胞株での検討は,動物実験での検討が終了し次第,検討を開始する。細胞株の検討には,広島大学原爆放射線医学研究所 田代聡教授に協力を仰ぐ予定であり,田代教授は既に了解済である。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験は,得られた結果を取りまとめ,成果を国内・海外学会で発表を行う予定しており,この旅費に研究費の一部を充填する。また本年度は細胞株の検討を開始しているため,細胞株そのものの購入や実験を行うための諸費用に研究費を使用する予定である。
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