研究課題
ガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA 以下EOB)造影肝MRI検査は,現在肝腫瘍の診断に不可欠となっている。一方でEOBは膜トランスポータを介して正常肝細胞に取り込まれるため,様々な薬剤との相互作用あるいは肝障害の程度によってもその造影効果が左右されると考えられる。本研究は抗癌剤等の薬物投与によるEOB造影肝MRIの診断能の変化を確認することを目的として開始した。まず申請者は乳癌患者に使用されるラパチニブ(チロシンキナーゼ阻害剤)がEOBの肝細胞への取り込みを阻害する可能性について症例報告をしていたため,ラパチニブがMR画像へ与える影響についての検討を開始した。健常ラットを用い,ラパチニブを投与したラット(ラパチニブ群)とコントロール群(溶媒のみを投与したラット)を準備し, EOB造影MRI撮影を行った。MRI撮影後,病理学的検索を目的にラットを屠殺し,ラットの肝臓の病理学的検索を行った。結果としてラパチニブ群,コントロール群においてEOB造影MRIの造影効果に差は認められなかったが,本検討内容を論文にまとめ報告した。臨床検討はラパチニブによる化学療法を施行されている患者10例にEOB造影MRIを実施したが,ラパチニブの投与によりEOB造影MRI画像が変化したものは1例であり,ラパチニブのみならず、種々の複合的な臨床的条件でのみ、EOBによる肝エンハンスメントの減弱が起こると推察され、その複合的要因について考察した。ついでEOB造影MRIの造影効果が肝障害によっても影響されることに注目し,原発性肝細胞癌に対し定位放射線治療を行った患者を対象に臨床検討を行った。結果としてEOB造影MRIの造影効果は30Gy/4分割以上の照射で有意に低下することが判明した。また現在定位放射線治療前におけるEOB造影の有用性も検討しており,あわせて現在論文を作成中である。
すべて 2013
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Japanese Journal of Radiology
巻: 31 ページ: 386-392
10.1007/s11604-013-0208-6