平成26年度ではアミロイドを画像化する陽電子放出画像(PET)を撮像した99例から最終的に脱落例14名を除いた85名で評価した。前年度の結果を踏襲しNIA-AA (2011)を用いて、診療診断と研究診断の乖離を検討した。probable ADと臨床診断された患者で、アミロイドPET陽性かつMRIなどで神経障害ありと診断されたものは40名中27名であった。また、他の認知症の合併などの可能性があるpossible ADでは20名中6名でアミロイドPETが陽性であった。残り14名の陰性患者では他の疾患が原因である認知症と診断された。また軽度認知障害(MCI)の患者では25名中10名でAD病理が関連する病態と考えられた。3名はアミロイドPETが陽性であったが、MRIやSPECTでは異常が指摘できなかった。残りの患者はアミロイドPETが陰性であり、他の病態が認知機能低下の原因と考えられた。本研究では臨床的にADまたはMCIの患者において85名中37名が陰性となり、AD病理が関連する可能性は低いと考えられた。既存の文献の報告と同様に、概ね30%程度の臨床診断と研究診断の乖離があると考えられる。厚生労働省の平成22年の報告に基づき本邦の認知症患者を450万人とし、これまでの認知症の頻度の報告から約半数の200万人程度がADと診断されていると推測できる。これらの患者が一人当たり1日500円程度のADに対する薬剤を10年間服用すると、費用は約100万円必要となる。暫定的にADの可能性がある200万人のうち60万人程度(30%)の診断の変更が生じると考えると、6000億円程度の費用が病理学的ADの根拠に乏しいまま治療されている可能性がある。アミロイドPETの認知症診療に与えるインパクトは大きいが、アミロイドPET費用の設定が今後の重要な検討項目と考えられる。
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