本研究ではエストロゲンレセプター陽性乳癌におけるマイクロRNAの発現を解析し、エストロゲンレセプター陽性乳癌のLuminal AとLuminal Bサブタイプの生物学的特性に関与するマイクロRNAを同定し、そのマイクロRNAと標的遺伝子候補の機能の解析と、バイオマーカー、治療への応用の可能性を検討することが目的である。 Luminal AとLuminal Bの凍結乳癌組織を用いたマイクロRNAとメッセンジャーRNAのマイクロアレイ解析により、各群で発現に差のあるマイクロRNAとメッセンジャーRNAをクラスター解析により選出した。 多数の凍結乳癌組織を用いて、上記で選出のマイクロRNAの定量的RT-PCR法によるバリデーションを行い、さらに数種類のマイクロRNAに絞った。また、これらマイクロRNAの標的遺伝子候補をコンピューター解析により予測し、この標的遺伝子候補の蛋白の発現量を、乳癌組織のパラフィンブロックを使用し、免疫組織化学染色により検討した。 標的遺伝子候補の蛋白発現量とマイクロRNAの発現量の検討により、エストロゲンレセプター陽性乳癌の生物学的特性に関与するマイクロRNA、miR-1290とその標的遺伝子候補を同定した。 エストロゲンレセプター陽性乳癌細胞株のMCF-7とT-47Dに、miR-1290を導入し、メッセンジャーRNAと蛋白を採取し、採取したメッセンジャーRNAと蛋白から、マイクロRNAとメッセンジャーRNAの発現量をRT-PCR法で測定した。また、標的遺伝子候補の蛋白発現量はウェスタンブロッティングにより発現量を測定した。miR-1290と標的遺伝子候補のメッセンジャーRNA、蛋白の発現量の相関を検討し、miR-1290 の標的遺伝子候補をNAT1に絞った。
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