本研究は、長期的に安定した上部構造を患者に提供できるための、患者に応じた上部構造の設計ができるような指標を作成することを目的としている。我々はこれまで、上部構造の前装部の破損に注目し、上部構造の後ろ向き調査や暫間上部構造の前向き調査、被験者の主機能部位の測定を行ってきた。 本年度は、上部構造前装部の破損と夜間のブラキシズムとの関連性を調査するために、簡易咬合接触解析装置であるロッキーマウンテンモリタ社製のブラックスチェッカーを用いて、後ろ向き調査を行った被験者の夜間ブラキシズムを測定することを計画した。ブラックスチェッカーとは、着色された極薄のマウスピースのようなもので、夜間上顎に装着して、その色の抜け具合によってブラキシズムの有無や特徴が調査できる。しかし、過去の文献を見ても測定日数が明確にされておらず、まずは理想的な装着日数を調査することにした。 5人の被験者(男性3名、女性2名)に対して夜間ブラックスチェッカーを装着してもらい、1~4日の変化を観察した。夜間ブラキシズムの自覚のある男性被験者においては、装着2日目でブラックスチェッカーの咬合接触部位が破れる現象が観察できた。しかし、咬合接触の弱い男性被験者では、装着2日目では咬合接触状態はあまりはっきり現れず、2日目の状態より3日目の方が明らかに咬合接触状態を観察することができた。装着4日目の方が3日目よりも色の抜け具合は大きかったが、3日目の状態でも十分に観察することはできた。また、装着3日目でブラックスチェッカーの咬合接触部位が破れる被験者も確認され、以上より装着期間は3日が適切かと考えられた。 現在は、以前後ろ向き調査を行った被験者に対してブラックスチェッカーを用いたブラキシズムの調査を行う準備を行っている。
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