本年度は前年度に観察されたLIPUSによる RAW267.4細胞の歯骨細胞分化により発現上昇する遺伝子のうち、骨芽細胞分化に関連しうるシグナル分子の発現について検討を行った。その結果、ヘッジホッグシグナル(Hh)に関連する遺伝子の発現が上昇しうる事を確認した。具体的にはShhおよびIhhの発現上昇が認められ、Dhhの発現上昇は認められなかった。またHhシグナルのレセプターであるPtch1も発現上昇が認められたが、Ptch2については発現上昇は顕著ではなかった。しかしHhシグナルのターゲット分子であるGli1の発現は認められず、細胞内でのHhシグナル活性化は示唆されなかった。 上記の遺伝子発現をふまえて、骨芽細胞へ分化しうる間葉系幹細胞株であるC3H10T1/2とRAW267.4より分化させた破骨細胞との共存培養を行ったところ、骨芽細胞分化が促される様子が観察された。この事から、破骨細胞から直接的にシグナル因子が分泌されている、あるいは、破骨細胞と骨芽細胞が接触する事でシグナルが伝達されることで骨芽細胞分化が促された可能性が示唆された。 ex vivoにおける検討では、マウス頭蓋骨を用いた期間培養系を用いて検討した結果、骨芽細胞、破骨細胞分化刺激を与えずにLIPUSを行うと培養期間中で頭蓋骨の形態が維持され、骨添加が起こる事が示唆された。ex vivoにおける検討については、現在、組織学的な検討を進めるべく準備中である。 以上から、LIPUSがRANKL存在下に強力に破骨細胞分化を促す事で破骨細胞から伝達される骨芽細胞分化シグナルが上昇し、骨芽細胞分化が促される可能性が考えられた。この破骨細胞を介した骨芽細胞分化は従来知られていたLIPUSによる直接的な骨芽細胞分化とは異なる機序と考えられ、今後より詳細な検討を進めたいと考えている。
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