小児の構音発達身体機能、構音器官の発達と関連している。我々は今回、構音期間の1つである舌の動きと圧力が小児の構音発達にどのように関連しているのかを明らかにするため音響分析を行った。被験者は健常小児(Hellmannの歯齢IIA期、IIC期、IIIA期)、器質的構音障害(舌小帯強直症、口唇口蓋裂)患児、機能性構音障害患児とした。被験音は舌の動きや圧力の影響をもっとも受けやすい子音/s//sh/とし、先行および後続母音/a/を接続したVCV音節/asa//asha/とした。録音された/asa//asha/の音声データより視察にて子音/s//sh/を切り出し、不偏推定法によるケプストラム平滑化対数スペクトルによりパワースペクトル形状の描出を行った。パワースペクトラムのもっとも高い部位をピーク値と定義し、ピーク値の比較を行うことで音響学的特徴を検討した。 1)健常小児の音響学的特徴をHellmannの歯齢によって分類し検討した。乳歯列完成期であるHellmanの歯齢IIA期と前歯部の交換期の時期であるHellmanIIC期では、今回被験音とした/s/に関してはピーク周波数のばらつきが非常に大きく、一方/sh/に関してはピーク周波数のばらつきが少なかった。 健常小児の/s//sh/の音響学的ピーク値と、口唇口蓋裂、舌小体強直症患者を含む機能性構音障害患者と比較したところ、共にピーク値は低く、聴覚印象でも音のひずみがみられた。機能性構音障害患者に関しては、サンプル数が非常に少なく、また構音動態が多様であったため、今後も検討が必要だが、今回は健常小児と同様の音響学的ピーク、もしくはわずかに低いピーク値がみられる傾向があった。
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