本研究の目的は、脳における二種類の情報処理系、すなわち認識系(入力に関する処理系)と意志決定系(出力に関する処理系)を統合的に扱うための理論的枠組みを整備し、脳のような高度に知的な情報処理システムを工学的に実現するための基礎モデルを築くことである。 この目的を達成するために、本研究では、(1)認識系における有力な既存の理論であるベイズ推論の考え方を拡張し、認識系と意思決定系を統合した理論的枠組みを構築すること(統合モデルの構築)、(2)統合モデルにおける厳密な最適解を定式化し、それを近似的に解く手法について検討すること(厳密解の導出と近似手法の検討)、および、(3)ベイズ推論における直接モデルと間接モデルを組み合わせた、柔軟性の高い新たな情報処理システムを提案すること(新たな情報処理システムの提案)の3項目について取り組むことを計画していた。 本年度は、まず、前年度に取り組んだ(1)統合モデルの構築と(2)厳密解の導出と近似手法の検討に関する成果を、査読付き国際会議である2013 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications (NOLTA2013)において発表した。本年度はまた、(2)厳密解の導出と近似手法の検討と(3)新たな情報処理システムの提案の研究に引き続き取り組んだが、年度内では発表できる形にまとめることが出来なかった。これについてはまとまり次第発表を行う予定である。
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