研究課題/領域番号 |
24830106
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
有薗 真代 立命館大学, 衣笠総合研究機構, ポストドクトラルフェロー (90634345)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | ハンセン病 / 社会学 / 集団 |
研究概要 |
今年度は、ハンセン病療養所を対象とする事例研究を中心に行った。 本研究の目的は、インタヴュー調査と文献資料の収集・分析に基づいて、戦後日本のハンセン病療養所において生起した多様な集合的実践の生成・展開過程を明らかにするとともに、隔離政策下に置かれた人々にとっての集合的実践の意味や効果について考察することである。対象時期は、第二次世界大戦終戦(1945年)から現在までである。 本年度に実施した具体的な作業は次のようなものである。 まず、ハンセン病療養所内の当事者運動とサークル活動を対象とする調査・分析を進めた。当事者運動に関しては、50年以上の期間におよび患者運動に関わり続けてきた方への聞き取り調査を、多摩全生園および東京都内にて行った。また、1953年の「らい予防法闘争」に参加し、その後、療養所内でサークル活動を主導することになった方2名(うち1名は療養所退所者)への聞き取り調査も、多摩全生園および福岡県北九州市で行った。 さらに、患者運動やサークル運動のような政治的志向の強い集団だけでなく、文学作品などの創作を行う文化的活動や、非組織的な形態をとる生活実践などに関する調査も行った。多摩全生園や長島愛生園、および星塚敬愛園など、複数の療養所を対象として調査を進めた。地理的条件の異なるそれぞれの療養所での調査結果を比較・対照することによって、国立ハンセン病療養所における集合的実践の特質を、体系的に把握することを試みた。さらに、この作業をつうじて、療養所入所者が日常的な生活空間において、彼らの生活を監視・管理下に置こうとする施設側からの圧力に抗して、他者と関わりながら自らの生き方を模索し創造していく主体的営為の側面を浮き彫りにすることを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、今年度はおおむね順調に進展したといえる。当初の予定どうりに、ハンセン病療養所での聞き取り調査と文献資料の収集を実行することができた。また、療養所退所者へのインタヴュー調査も行うことができた。 今年度の研究成果は、2013年度中に、世界思想社より単著として公刊される予定になっている。本書は、インタヴュー調査と文献資料の収集・分析に基づいて、戦後日本のハンセン病療養所における集団的な活動の生成・展開過程を明らかにすることを目的とするものである。具体的には、自治会や患者運動などの政治的活動(3章)、療養所内の視覚不自由者による文化的活動(4章)、非組織的な形態をとる生活実践(5章)を、事例としてとりあげた。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は、これまでの研究では、インタヴュー調査やライフヒストリー法などの手法を中心的に用いており、歴史研究の手法についてはやや不慣れな点があった。しかし、本研究課題を推進していくにあたっては、歴史研究の視点と手法を積極的に取り入れていくことが必要不可欠である。 したがって今後は、申請者の受入教官である福間良明氏(立命館大学産業社会学部准教授)の助言と指導を受けながら、研究を進めていく方針である。歴史研究の技術に長じている福間氏からの助言と指導を受けることによって、申請者のこれまでの研究の不十分点が補完され、今後の研究は大きく推進すると期待できる。
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