本研究で開発したフロリナートによる液浸法を用いて、南極積雪中介在物の光学顕微鏡観察および顕微ラマン分光分析を行った。南極表面積雪の氷粒子内には、ミクロンオーダーのサイズを持つ微粒子はほとんど存在せず、微粒子から水溶性塩のラマンシグナルは検出されなかった。その一方で、氷化深度付近のフィルン内部では、無数のスーパーミクロン粒子が観察され、これらの組成は主に水溶性硫酸塩であることが明らかになった。これらの結果は、氷床表面にサブミクロンサイズの水溶性エアロゾルが沈着した後、積雪内部で化学成分の再分布・化学反応が生じ、深さとともにエアロゾル起源粒子の成長・変質が進んでいることを示唆している。
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