病原菌やアポトーシス細胞の食細胞による貪食(ファゴサイトーシス)は、生体防御や発生において非常に重要である。本研究課題では、異なる貪食ターゲット受容体を介した細胞内情報伝達活性化と、それに伴う形態的、機能的に異なる貪食小胞(ファゴソーム)の形成、成熟過程の相関関係を、多色蛍光ライブセルイメージング解析等を用いて明らかにした。前年度までの研究成果により、Fc-gamma受容体依存的なファゴサイトーシス特異的に、低分子量GTPaseの一つであるRab35が寄与することを見出した。本年度では、Rab35のFc-gamma受容体依存的なファゴサイトーシスへの関与の詳細を解析した。その結果、以下の点について明らかとなった。(1)Rab35は、ファゴサイトーシスの初期過程であるファゴサイトカップおよび後期課程である成熟過程のファゴソームに強く局在した。(2)Rab35の成熟過程のファゴソーム上の局在は、ファゴソームの周囲に一様ではなくドット状の偏りを示した。(3)ファゴソームに局在したRab35は、管状の構造物として、細胞中央付近に連続的に移動した。(4)Rab35のエフェクター分子であるMICAL1およびMICAL-L1のうちMICAL-L1のみファゴソーム上のRab35と共局在し、さらに、Rab35と同様の管状の構造物として移動が見られた。 以上のことからFc-gamma受容体依存的なファゴサイトーシスにおいてRab35が、初期および後期の二重に役割を果たしていること、さらに、MICAL-L1を介し成熟過程のファゴソームからの物質輸送に関わることが示唆された。このことは、Fc-gamma依存的ファゴサイトーシスにおける受容体のリサイクリングあるいは抗原提示にRab35/MICAL-L1が関与することが考えられる。
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