研究課題
今年度は前年度の解析を継続し、OSCC細胞株(SAS、Ca9-22)におけるINK4/ARF遺伝子座の高次クロマチン構造についてChromosome conformation capture(3C)アッセイを行った。線維芽細胞と比較し、OSCC細胞株においてはクロマチン高次構造が変化していることが分かった。前年度の解析より3か所のCTCF集積部位(IC1、IC2、IC3)のうち、IC3にてCTCF結合が低下しており、またp16のプロモーター領域は高度にDNAメチル化を受け、p16の発現抑制に関与していることが分かっている。それらのエピジェネティックな変化が高次クロマチン構造の変化に関与していると考えられた。続いて今年度はOSCC組織におけるDNAメチル化と臨床病理学的特徴とを併せて解析し、その臨床学的意義を解明するため、OSCC組織よりDNAを抽出し、バイサルファイト処理を行った後、INK4/ARF遺伝子を含めた癌抑制遺伝子やMGMT、TFAP2E等の薬剤感受性に関与する遺伝子のDNAメチル化状態を定量的MSP法にて解析した。結果として、p16はOSCC組織においてもDNAの高メチル化を受けているサンプルも見られたが、S-1を併用した術前の化学放射線療法の治療効果やその他の臨床病理学的特徴との関連は見られなかった。一方、MGMT、TFAP2Eに関しては術前治療の治療効果との関連が見られ、両者の高メチル化症例は治療効果が乏しくなることが分かった。これらの結果より、DNAメチル化異常はOSCCの治療抵抗性に関与するエピジェネティクス異常のひとつと考えられ、今回対象とした遺伝子のDNAメチル化はOSCCの薬剤感受性を予測するマーカーとなり得る可能性が示唆された。今後さらに研究を継続し、OSCCの病態に関連するエピジェネティクス・プロファイルに基づいた癌の新規診断法の開発および個別化治療の実現を目指していきたいと考えている。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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