研究概要 |
TRPチャネル阻害薬(2-APB)やTRPC1siRNAを用いたカルシウム流入経路の阻害実験により,ハイパーサーミアによる唾液分泌とTRPC1チャネルとの関連を調べた. 細胞内のカルシウム濃度(100nM)は細胞外カルシウム濃度(1~2mM)に比べて1~2万分の1という極めて低い濃度に保たれているが,刺激を受けた場合,一時的に細胞外からカルシウムが流入し,細胞内カルシウム濃度が数 百nM以上に上昇する.これによってカルシウム依存性のチャネル活性が変化し,唾液分泌が起きる. TRPC1チャネルは近年カルシウム流入を担うチャネルとして注目され,唾液腺においてもその存在が確認されている.申請者のこれまでの研究により,細胞内カルシウム濃度が温度依存性に上昇することを実証している.本研究ではTRPC1チャネルとハイパーサーミアによる唾液分泌との関連を調べるため,まずはTRPチャネル阻害薬(2-APB)を用いたカルシウム流入経路の阻害実験を行い,温度上昇に伴うTRPC1チャネルの 活性に違いがあるかをマウスEx vivo顎下腺灌流実験を用いて検証した.2-APBに関してマウスEx vivo顎下腺灌流実験において分泌量の低下を認めたものの,ムスカリン受容体を阻害することによる唾液分泌抑制効果なのか,TRPチャネルの阻害による効果なのかは現在のところ不明であり,カルシウムイメージング法を用いて細胞内カルシウム濃度を直接的に測定することにより,今後さらにメカニズムについて検討する必要があると考えられる.
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