研究課題
ⅰ)PTX3の分子認識機構と自然免疫PTX3は重症感染症などにおいて放出される細胞外ヒストンの内皮細胞障害活性を凝集反応により保護する効果があることを前年サイエンスシグナリング誌に報告したが、本年度は、ヒストンとPTX3について、反応部位を特定するため、部分長ペプチドを用いて、凝集反応、HUVEC障害活性の両者で調べたところ、PTX3のN端に近い部分のペプチドが重要であることが判明した。ヒストンH3についてもHUVEC障害活性はC端に近い30アミノ酸残基が重要であることを同定した。取得したヒトH3に対する抗体で、C端を認識するクローンはHUVEC障害活性を阻害したが、PTX3との凝集反応は阻害しなかった。これに対して、PTX3の抗体についてヒストンとの凝集反応について解析したところ、一部のクローンで凝集反応を阻害するものがみつかった。PTX3の診断・治療へのターゲット疾患として血管炎は重要であると考えられ、日本で年間1万人以上がり患し、原因不明の川崎病について、PTX3との関連を探る研究を、愛知医科大小児科と共同研究を行い、血中PTX3濃度と川崎病重症度の相関が高いことが判明したため学会発表を行い、現在論文投稿中である。ヒストンの細胞障害活性に関して昨年度見出したマイクロベジクル放出現象に関して、MS解析等を行い、マーカーとなるタンパク質を同定した。ⅱ)RNAプロセッシングと細胞周期および細胞分化とのかかわり大腸菌発現系と別途にHEK細胞発現系を構築した。両者とも精製タンパク質は多量体を形成するが、後者の精製タンパク質で、結合低分子の候補が数個得られた。これらの低分子化合物が阻害剤として作用するかどうかのアッセイ系をスプライシングターゲット遺伝子によるPCRにより立ち上げた。同定した数個のスプライシングターゲット遺伝子に関するデータを取得し、論文投稿準備にはいった。
2: おおむね順調に進展している
これまでの成果について、インパクトの高いジャーナルへの投稿することができたが、本研究の主題である分子認識メカニズムについての研究では、PTX3-ヒストンについては凝集反応であること、WTAPについては期待よりタンパク精製が困難であったことなどにより遅れが発生した。しかし本年度、凝集を阻害する抗体候補の取得、WTAP結合化合物のヒットなどのブレークスルーがあり、研究期間内に一定の成果を見込めるものと考える。
1)PTX3の分子認識機構と自然免疫これまでに、PTX3とヒストンH3との凝集反応(およびHUVEC細胞障害)について、両者ともほぼ30アミノ酸残基程度に絞り込むことができた。また、凝集反応を阻害する抗PTX3抗体を取得したことから、本抗体を用いて、PTX3ペプチドと抗体との反応解析を行う。これまでに開発してきたFvモデリング技術により、ペプチドとCDR部位との相互作用について、MDシミュレーションを行い、反応面の解析を行う。抗PTX3抗体を免疫源としてイディオタイプ抗体を取得する。PTX3反応部位を20アミノ酸程度まで絞り込み、結晶構造解析を行う。ヒストン抗体が取得できた場合も同様に行う。細胞外ヒストンのHUVEC障害時に放出されるマイクロベジクルについて、MS解析により同定した膜蛋白質に対する抗体を用いて特異的FACSを立ち上げる。川崎病患者血清を用いてPTX3複合体解析を行い、分子病態を調べる。また、確立した腹腔臓器手術後の癒着モデルマウスでPTX3ノックアウトマウスにより創傷治癒と癒着の関連を調べる。2)RNAプロセッシングと細胞周期および細胞分化とのかかわりWTAPがオルタナティブスプライシングに関わる分子機構の解明をめざして進めるが、戦略として阻害剤の探索にフォーカスする。確立した発現系で良好な精製タンパク質が得られる断片を用いて、候補化合物のSPRによるスクリーニングを行う。同時に、HUVECおよびHeLa細胞に添加した際の、WTAP複合体の変化をco-IPにより、スプライシングの変化を他ゲット遺伝子のqPCRにより、細胞周期の変化をFACSにて、観察する。また、これまでに同定しているCBLL1のRINGフィンガーについては、タンパク質の精製により、相互作用解析を行う。RNAとの結合については、RIP-PCRにてチェックする。これらにより、結合阻害のサイトを特定する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 13件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Anal Biochem.
巻: Apr 16 ページ: 30027-6
10.1016/j.ab.2016.04.004.
Microcirculation.
巻: Apr;23(3) ページ: 240-7
doi: 10.1111/micc.12269.
Biochemical and Biophysical Research Communications.
巻: Jan 22;469(4) ページ: 797-802
10.1016/j.bbrc.2015.12.075.
Br J Pharmacol.
巻: Jan;173(1) ページ: 103-14
10.1111/bph.13340.
Acta Neuropathol Commun.
巻: Dec 4;3(1) ページ: 82
10.1186/s40478-015-0259-2.
Science.
巻: Nov 6;350(6261) ページ: 680-4
10.1126/science.aaa4335.
Sci Rep.
巻: Oct 6;5 ページ: 14780
10.1038/srep14780.
Nature.
巻: Oct 15;526(7573) ページ: 397-401
10.1038/nature14909.
Biochem Biophys Res Commun.
巻: Oct 2;465(4) ページ: 725-31
10.1016/j.bbrc.2015.08.065.
Stem Cell Reports.
巻: Sep 8;5(3) ページ: 365-77
10.1016/j.stemcr.2015.06.006.
PLoS One.
巻: May 27;10(5) ページ: e0125468
10.1371/journal.pone.0125468.
J Biochem.
巻: Oct;158(4) ページ: 331-8
10.1093/jb/mvv044.
J Immunol.
巻: May 15;194(10) ページ: 4963-73
10.4049/jimmunol.1403121.
http://www.qbm.rcast.u-tokyo.ac.jp/