研究課題/領域番号 |
25220205
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浜窪 隆雄 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90198797)
|
研究分担者 |
堀内 恵子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (00456203)
太期 健二 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (20466866)
川村 猛 東京大学, アイソトープ総合センター, 准教授 (70306835)
篠田 恵子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (80646951)
津本 浩平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90271866)
|
研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
|
キーワード | 自然免疫 / パターン認識受容体 / RNAプロセッシング / オルタナティブスプライシング / 血管内皮細胞 / 敗血症 / 細胞周期 / ヒストン |
研究実績の概要 |
ⅰ)PTX3の分子認識機構と自然免疫 ヒストンとPTX3の凝集反応(およびHUVEC細胞障害)について、凝集反応を阻害する抗PTX3抗体を取得したことから、PTX3ペプチドと抗体との反応解析を行い、反応部位がN端にあり、凝集反応とヒストンの細胞障害活性を阻害することを見出した。すなわち、本プロジェクトの目的である、パターン認識の部位をほぼ特定し、この部位はIαIなどのこれまで知られている部位と異なるため、血中で除外されることなく有効な阻害剤となる可能性を見出した。PTX3ノックアウトマウスを用いて、本阻害抗体の抗イディオタイプ抗体を取得し、クローニングを開始した。血中PTX3濃度が川崎病重症度の判定となることを血管炎国際学会で発表した。また、重症例数例についてMSスペクトロメトリーによるPTX3複合体解析を行い、数個の関連タンパク質を同定した。ヒストンの細胞障害活性に関して見出したマイクロベジクル放出現象に関して、同定したマーカータンパク質の抗体を作製し、マイクロベジクルのFACSによる測定法を確立した。また、電顕と共焦点顕微鏡による観察を行い、ヒストンの内皮細胞障害の分子メカニズムについて解析を行った。 ⅱ)RNAプロセッシングと細胞周期および細胞分化とのかかわり WTAP阻害低分子ヒット化合物を昨年度取得し、市販化合物ライブラリーから連携研究者の産総研福西氏の協力により、コンピュータ解析で候補10化合物を絞り込み、昨年度立ち上げた、大腸菌発現系精製タンパク質による結合測定とスプライシングターゲット遺伝子のPCRによるオルタナティブスプライシングの変化を評価し、一定のデータを得た。基本骨格の特定を進めるため、市販化合物ライブラリーから再度候補化合物をしぼりこみ、候補30化合物を準備した。ターゲット疾患として急性白血病細胞株でWTAP高発現のものを特定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然免疫全般や敗血症におけるヒストンの血管内皮細胞傷害への関心が高まっており、PTX3の治療薬開発の方向性を定めることができた。また、凝集反応の解析も進み、新しいシミュレーション法への展開が期待できる。さらにWTAPが関与するRNAプロセッシングにも関心が高まり、我々の論文の引用が増えている。阻害剤の開発の重要性が増したと考えられ、研究期間内に両テーマとも一定の成果を見込めるものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
1)PTX3の分子認識機構と自然免疫 これまでに、同定したヒストンH3の細胞障害性の強い部位のペプチドと保護作用のあるPTX3の部分ペプチドとの凝集反応(およびHUVEC細胞障害)について、さらに詳細な凝集反応の解析とシミュレーション法の開発を行う。ペプチドの変異体を作成し、凝集反応の解析を行うとともに、より強い活性のあるものを探索する。PTX3ノックアウトマウスを用いてIn vivoでの反応を確認し、治療薬開発へのPOCを取得する。凝集反応を阻害する抗PTX3抗体をとPTX3ペプチドとの反応解析を行い、凝集反応との比較を行う。マイクロベジクルのFACS解析法をvivoで行い、敗血症のバイオマーカーとしての可能性を探る。共同研究者が集めた川崎病患者血清を用いてPTX3複合体解析を行い、分子病態を調べる。 2)WTAP阻害剤の開発 新たに選出した候補化合物30種について、精製WTAP結合と細胞におけるスプライシング変異を調べ、ファーマコフォアを推定し、メディシナルケミストとの連携により合成展開を図る。また、細胞増殖阻害をターゲット疾患細胞でのアッセイを行い、本年中でのリード化合物の取得をめざす。
|