研究課題/領域番号 |
25240051
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
影浦 峡 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00211152)
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研究分担者 |
阿辺川 武 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (00431776)
内山 将夫 独立行政法人情報通信研究機構, その他部局等, 研究員 (70293496)
藤田 篤 公立はこだて未来大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10402801)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 知識アーカイヴ / 翻訳知 / 共同翻訳 / 翻訳教育 / 言語処理 |
研究概要 |
今年度は、概ね予定通り、以下を行った。 (1) 「翻訳教育用みんなの翻訳」(プラットフォーム)の構築:我々が開発してきた「みんなの翻訳」をベースに、さらに以下の機能を備えたシステムを実装した。(a) 協調翻訳における翻訳者の役割を定義できるモード、(b) 情報参照知をアーカイヴ化するログ取得ポイントの設定、(c) 対話遂行知をアーカイヴ化するログ取得ポイントの設定、(d) 訳文作成知をアーカイヴ化するログ取得ポイントの設定、(e) 協調翻訳・翻訳教育に対応したインタフェース、(f) 原文、訳文の複数のバージョン、ログをタイムスタンプを含めて統合的に管理し利用するためのXML(拡張TMX)による文書管理、(g) 3ペインモード(原文・訳1・訳2)と訳文修正モードを備えた翻訳支援エディタ。 (2) 試験利用を介した翻訳文書の蓄積:神戸女学院大学・東京外国語大学・立教大学・マコーレー大学・リーズ大学・チュービンゲン大学と試験利用のための準備を進めた。新規開発した「翻訳教育用みんなの翻訳」の直接的な試験利用による目標データ量5万語の蓄積は達成できなかったが、これまでに蓄積してきた下訳・修正訳データ5万語を整理し、「翻訳教育用みんなの翻訳」に対応するデータを構築した。 (3) 翻訳知アーカイヴ化手法の開発:(1)で導入したログ取得ポイントは、理論的には(a) 情報参照知、(b) 対話遂行知、(c) 訳文作成知を取得するもので、いずれに関しても、蓄積メカニズムを定義し実装し、要約統計表示及び可視化表示を一部実装した。 以上の研究成果は、国内外の学会で発表している他、上記(2)に関連し、神戸女学院大学・マコーレー大学・チュービンゲン大学・東京工業大学の関係者に向けてデモを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開発・発表については、概ね順調に進展している。データ整備のための体制づくりと「翻訳教育用みんなの翻訳」を直接用いた翻訳知データの蓄積については、上述の通り少し遅れたが、これまでの研究で蓄積してきたデータを変換することで、当初目標に該当する必要なデータ量の蓄積を別のかたちで達成することができたため、この点でも、概ね順調に進展していると評価することができる。 現在、研究としては順調に進んでいるが、大きな問題として、世界の翻訳大学院に試験利用を促していくための予算と人的資源が不足していることにある。この点をめぐっては、現在のところ直接我々のシステムと競合するシステムはないものの、部分的に競合する機能をめぐる実験が特に欧州のいくつかの研究プロジェクトで進められており、我々のシステムが世界的な標準になるかどうかについては焦燥感はある。このような状況から、今年度は、学術的な発表よりもむしろ理念とシステムをアピールするために、技術系の国際会議等ではなく翻訳系の国内外の会議を選んで発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究面においては、(1) 翻訳知をアーカイヴ化する手法の開発とプラットフォームの構築、(2) アーカイヴを用いた翻訳知の記述的明確化とモデル化、(3) 翻訳知を活用した共同翻訳の促進と翻訳技術向上のための能動的支援メカニズム・環境の開発、という、当初の戦略に沿ってこのまま研究開発を進める。 とりわけ、第二年度には、翻訳知のアーカイヴ化手法を確立し、それを組み込んだ「翻訳教育用みんなの翻訳」を完成させ、一般に向けて公開する。翻訳知のアーカイヴ化手法の確立は、本研究プロジェクトにおける前半の柱となる。 システムの公開と翻訳知アーカイヴ化の確立のために、第二年度には試験利用グループを中心に密接な情報交換を行い、利用とシステム改善・アーカイヴ化手法の改善を進めると同時に、データの蓄積を進める。 利用を広げフィードバックを得るとともに、翻訳教育用プラットフォームとして世界標準のシステムとしてのステータスを確立するための準備として、第二年度は特に、潜在的な利用グループへのアウトリーチと試験利用グループからの実フィードバックを重視する予定である。その一環として、第二年度(2014年度)には、試験利用グループを中心とするワークショップを開催することを予定している。 我々の研究グループは、とりわけ分担者を中心に言語処理の技術的な側面については十分な業績と研究成果を上げているので、その活用は、引き続き個別に進めるものの、プロジェクト全体としては、第三年度以降の課題として位置づける。これは、基本的に当初の予定に沿うものである。
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