研究課題/領域番号 |
25245041
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大湾 秀雄 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60433702)
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研究分担者 |
都留 康 一橋大学, 経済研究所, 教授 (00155441)
鈴木 勘一郎 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 教授 (10569784)
朝井 友紀子 東京大学, 社会科学研究所, 研究員 (10588172)
上原 克仁 静岡県立大学, 経営情報学部, 講師 (60509157)
高橋 新吾 広島修道大学, 経済科学部, 助教 (70445899)
川口 大司 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (80346139)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 労働経済学 / 人事経済学 |
研究実績の概要 |
28年度当初計画にあった以下の成果をまとめた。 (1)評価のバイアスと雇用主学習:評価者と被評価者の属性の違いが評価のバイアスや、能力評価の学習スピードにどのような影響を与えたか。評価者の被評価者の性別、学歴、家族構成における違いが大きいほど、評価者の得る情報量が少なく中心化が進むこと、また採用時の学歴情報が昇格に与える影響は3年程度で半減すること、などを明らかにした。 (2)持ち従業員持株会の生産性に与える影響:従業員持ち株会への参加の度合いの変化が、生産性、賃金、企業業績にどのような影響を与えているか。従業員一人当たり自社株保有金額が増加すると生産性に有意に正の影響が出ること、その影響は機関投資家保有比率が高いほど、外国人投資家比率が高いほど、企業規模が小さいほど大きいことを示した。 (3)労働時間と昇進制度と男女格差の関係:「遅い昇進」制度の経済合理性が、人的資本投資の性格、残業規制によってどのように変化し、女性活躍推進のためにどのような変化が望ましいか。理論的には、昨今の経済条件の変化を受け、「早い昇進」の制度が最適になっている可能性が高いこと、特に女性に対しては「早い昇進」がより望ましいことを示した上で、男女の労働時間や昇進パターンにおける違いが、理論と整合的であるかを検証した。実際に、理論モデルが予測するように、男性よりも女性の方が、労働時間と昇進の間の相関が高いことを示した。 (4)残業時間がメンタルヘルスにどのような影響を与えるか。残業時間、深夜残業、休日出勤、11時間未満のインターバルの頻度、などがメンタルヘルスの悪化と相関が高く、特に、操作変数法を用いて、ホワイトカラーに対しては、休日出勤、11時間未満のインターバルの頻度による因果関係が、ブルーカラーに対しては、残業時間による因果関係の特定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
経済産業研究所におけるコンプライアンス強化でデータ提供企業との秘密保持契約および研究者との秘密保持誓約書の見直しによりデータへのアクセスが3-4か月止められたため、平成28年度の研究作業が29年度にずれ込んだが、更に29年度中に、年度末までに、人事データを経済産業研究所から大学に移管するよう要請を受け、その準備作業でさらに分析作業に影響が出た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は平成29年度で終了したが、その後続研究課題である基盤研究A「企業内データを用いた企業間生産性格差と労働政策課題の解明」(課題番号1 8 H 0 3 6 3 2)において、引き続き人事データを用い、下記の研究テーマの分析を計画している。 (1)男女で業務遂行能力に差が生じるのはなぜか、(2)業務プロセスの改善がどのように生産性や残業に影響を与えるか、(3)コミュニケーションの活性化を狙った研修が受講者の生産性にどのような影響を与えたか、(4)働き方がメンタルヘルスにどのような影響を与えるか、(5)採用施策やプロセスによって、内定者の能力分布、入社後の評価、早期退職率がどの程度変わるか、(6)中間管理職が部下やチームの生産性にどの程度影響を与え、かつどのような経路で影響を与えているか、(7)組織変更やコミュニケーションの活性化策によって、研究開発者間の知識スピルオーバーがどのように変わり、特許生産性にどの程度影響を与えたか、といった研究課題に取り組んだ。
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