研究課題
【A1】高齢者の運動イメージの加齢変化を、手・足・文字のメンタルローテーション(MR)課題で検討した。その結果、身体部位図形(手・足)のMRにおいてのみ、後期高齢者で前期高齢者に比した反応時間の遅延がみられた。また、これらの反応時間に関して、手のMRではTMT(Trail Making Test)と、足のMRではTUG歩行検査と有意な相関がみられた。【A2】運動イメージの加齢変化の神経基盤を明らかにするために、上記の手・文字のメンタルローテーション課題中の脳活動をfMRIによって測定した。ここでは、神経加齢をやわらげる要因として運動習慣を取り上げ、運動群と非運動群の比較ができるように2群の高齢者データを収集した。【B】身体近傍空間の加齢変化について、行動データで得られた結果を踏まえ、事象関連電位による脳機能計測データと運動機能などとの相関分析をおこなった。【C1】視線計測による認知機能低下の検出手法の開発を目指して、軽度認知障害者と健常高齢者とを、顔ワーキングメモリー(WM)課題中の視線計測で比較した。その結果、健常高齢者でみられる目・鼻への視線集中が、軽度認知障害では低下していることが分かった。【C2】高齢者にみられる視覚WMと歩行機能との相関が、どの脳部位の活動と関連しているのかを明らかにするために実施した実験に関して、結果を論文にまとめ刊行した。【D1】二重課題(DT)条件下での運動介入が地域在住高齢者のどのような認知機能を向上させるかの検証において、WM課題中の脳機能をfMRIを用いて介入前後変化を解析した実験に関して、結果を論文にまとめ刊行した。【D2】高齢者を対象に,足刺激のメンタルローテーション課題を行った直後に、足関節の制御が重要な意味を持つ立位姿勢時の動揺量が減少するかを検討した。その結果,若齢者には見られた姿勢動揺量減少効果が,高齢者では見られなかった。
2: おおむね順調に進展している
計画していたすべての研究項目において、学会発表できる成果が得られ、また、すでに学術雑誌に査読論文が掲載されたものや投稿直前まで準備が進んでいるものもある。
【A】運動イメージの加齢変化の神経基盤については、収集した膨大なデータを解析し、脳活動、脳の構造、およびそれらと行動成績との関連について、運動群と非運動群の差異を明らかにする。【B】身体近傍空間の加齢変化に関わる情報処理メカニズムを解明するため、これまでに行った実験データを分析し、視触覚相互作用と高齢者の運動能力、注意機能との関連性を明らかにする。また,高齢者被験者を追加し、データの信頼性を高め、論文にまとめる。【C】視線計測による認知機能低下の検出については、昨年度に収集したデータをまとめ、論文化する。【D】運動イメージを用いた認知介入に関して、高齢者において若齢者と異なる結果が出た理由について、高齢者についてはMR試行数を若齢者よりも多く設定する必要がある、という可能性を検討する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (42件) (うち国際共著 3件、 査読あり 36件、 オープンアクセス 10件、 謝辞記載あり 37件) 学会発表 (47件) (うち国際学会 15件、 招待講演 1件) 図書 (9件) 備考 (1件)
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