研究課題
基盤研究(A)
ナノ㍍オーダーの極細半導体細線に蓄積される一次元電子ガス(1DEG)は伝導帯電子状態密度の離散化に伴う量子サイズ効果に起因したユニークな光・電子・磁気物性を示すことから、1DEG 形成により金属酸化物半導体の物性を化合物半導体以上に高めることが可能と考えられる。本研究では、AFMリソグラフィー技術を利用して、金属酸化物半導体上にナノ㍍オーダーの極細1DEGを電界誘起することで超巨大熱電能の観測を試みることを目的とした。本研究目的達成のキーは、一次元電子ガスを書き込むために必要な超高精度原子間力顕微鏡である。H25年度は、4月の研究開始直後からAFMの機種選定を行い、デモ実験、ヒアリングを約5ヵ月間かけて行った。金属酸化物半導体SrTiO3上に堆積させた含水ナノ多孔性ガラスCAN薄膜上で電界を印加した導電性AFMチップを走査するデモ実験の結果、幅13nm、高さ9nm、長さ90μmのナノ細線の作製が可能であることが分かり、当初の計画通りH25第3四半期中に購入した。その後、第4四半期には新たに金属マスクパターンを設計・制作し、リソグラフィー条件の最適化を行った。また、SrTiO3以外の金属酸化物としてサーモクロミック材料として知られるVO2を選択し、含水ナノ多孔性ガラスをゲート誘電体として用いた薄膜トランジスタ構造を作製、熱電能の電界変調を行った。
2: おおむね順調に進展している
H25研究実施計画記載のAFMリソグラフィー条件の最適化ができたとともに、将来的に実証が必要になるSrTiO3以外の金属酸化物の熱電能変調(二次元)に成功した。
①1DEGの超巨大熱電能計測(室温):アレイ化した1DEGの熱電能計測を行う(室温)。アレイのサイズ(チャネル面積)はAFMのスキャン範囲上限90μm×90μmとする。直径150 μmのK熱電対を用いてソース・ドレイン間に付与した温度差の計測を行い、同時にソース・ドレイン間の熱起電力を計測して、熱起電力-温度差プロットから熱電能を算出する。②1DEGの高分解能電子顕微鏡観察:本研究で電界誘起する1DEGを直接電子顕微鏡で可視化するのではなく、1DEG書き込み後のナノ多孔性ガラスの断面観察により、凸構造を観察する。凸部は1DEG書き込みに伴う水素ガス発生により膨張であると予想している。
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Nature Materials
巻: 12 ページ: 1057-1063
10.1038/NMAT3736
http://functfilm.es.hokudai.ac.jp/index.html