研究課題/領域番号 |
25246023
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
太田 裕道 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (80372530)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 含水ナノ多孔性ガラス / 光・電気・磁気特性の可逆変調 |
研究実績の概要 |
ナノ㍍オーダーの極細半導体細線に蓄積される一次元電子ガス(1DEG)は伝導帯電子状態密度の離散化に伴う量子サイズ効果に起因したユニークな光・電子・磁気物性を示すことから、1DEG形成により金属酸化物半導体の物性を化合物半導体以上に高めることが可能と考えられる。本研究では、AFMリソグラフィー技術を利用して、金属酸化物半導体上にナノ㍍オーダーの極細1DEGを電界誘起することで超巨大熱電能の観測を試みる。具体的には、金属酸化物半導体上に堆積させた「含水ナノ多孔性ガラス」薄膜上で電界を印加した導電性AFMチップを走査し、ナノ㍍オーダーの極細1DEGを広範囲に誘起することで金属酸化物半導体1DEGの計測を行う。なお、「含水ナノ多孔性ガラス」をゲート誘電体として用いる本手法は、安価・簡便に極薄・高密度キャリアを電界誘起可能な提案者独自の手法である。 H27年度は、一次元電子ガスの作製には至らなかったが、含水ナノ多孔性ガラスを用いて電気化学的に機能性酸化物の酸化・還元を行うことにより、光・電気・磁気特性の可逆変調に成功した。①水電気分解を利用したVO2薄膜のプロトン化によるオンデマンド赤外線透過・遮断デバイスの作製に成功した(2015論文掲載)。②本来絶縁体である酸化物(SrCoO2.5)を、電気が良く流れる磁石に、室温で可逆的に変えることに成功した。電気が流れる=情報「1」、流れない=情報「0」に加え、磁石につく=情報「A」、つかない=情報「B」を記憶することで、USBメモリなどの情報記憶装置の記憶容量を、大幅に向上させるための新しい技術として期待できる(テレビ・新聞で報道された。2016論文掲載)。③アモルファスWO3薄膜を、含水ナノ多孔性ガラスを使ってプロトン化することにより、可視光透過・遮断デバイスをガラス基板上に作製することに成功した(論文投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下表に研究業績の年度別推移を示す。研究開始当初(2013年度)と比較して、すべての項目で右肩上がりの進展をしている。研究業績を反映する論文数と招待講演数に加え、「含水ナノ多孔性ガラス」中の水の電気分解を利用した新しい情報記憶装置を開発したとして新聞・テレビで報道された点を考慮すると、研究は概ね順調に進展していると判断される。 年度 論文 招待講演 知的財産 新聞・テレビ 2013 1 1 0 0 2014 3 5 1 0 2015 5 12 1 3
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今後の研究の推進方策 |
初年度・二年目に当初計画通り「含水ナノ多孔性ガラス」中の水の電気分解を利用したSrTiO3単結晶上への一次元電子ガス誘起を試みたが、書き込みはできるものの不安定で、熱電能などの電気計測を行うことが出来なかったため、三年目には機能性酸化物薄膜全体を「含水ナノ多孔性ガラス」を用いて電気化学的に酸化・プロトン化することで絶縁体⇔金属変化を安定化し、VO2薄膜オンデマンド赤外線透過・遮断デバイス、SrCoOx薄膜電気・磁気メモリーデバイス、アモルファスWO3薄膜可視光透過・遮断デバイスの作製に成功した。 最終年度となる2016年度は、これらのデバイスの知見を活かしてAFMリソグラフィーを行い、光・電子・磁気物性の計測を行う。
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備考 |
2016年3月29日にオンライン出版された論文をプレスリリースした結果、3/30北海道放送HBCニュース(テレビ)、3/30化学工業日報(新聞)、3/30月刊OPTRONICS online、4/8科学新聞、4/16読売新聞で「北大が新しい記憶装置を開発」などとして報道された。 ホームページを2016年3月にリニューアルし、スマホ対応、レスポンシブデザインとした。
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