研究課題/領域番号 |
25247043
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
三原 智 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (80292837)
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研究分担者 |
西口 創 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (10534810)
上野 一樹 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (20587464)
五十嵐 洋一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50311121)
吉田 誠 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (70379303)
深尾 祥紀 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (80443018)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 素粒子実験 / 量子ビーム |
研究概要 |
平成25年度には、大強度パルスミューオンビームを使用したμ-e転換事象探索を行うにあたり、必要なミューオンビームを診断し実験感度を最大化するために必要な基礎的研究を実施した。ミューオンビームの診断を行うにあたって、本研究ではストローチューブ飛跡検出器、結晶カロリメータの製作を計画している。これらの検出器を製作するにあたっては検出器コンポーネントである、ストローチューブ、結晶シンチレータの開発を実行し、その後プロトタイプを製作して性能評価を行った上で、検出器を製作するというアプローチを取る。 このような研究方針に基づき、平成25年度にはストローチューブの開発をロシアJINR研究所の協力研究者らと実施し、そのストローチューブの性能評価試験、ガス検出器として動作させる際の必要なガスの条件の洗い出しを行った。現在までの開発により必要なストローチューブを大量に高品質で製作できる目処が立っている。今後はストローチューブ膜圧の極薄化など、さらに物質量を低減して運動量分解能を向上するために必要な開発を行う。また実機サイズのプロタイプを建設して、運転条件の最適化、宇宙線による分解能評価試験を実施する。 結晶カロリメータの開発においてはGSO結晶、LYSO結晶を使用し、光センサーとしてAPDを使用したプロトタイプ検出器を製作した。またAPD検出器の信号を増幅する増幅装置をロシアBINP研究所の協力研究者らと開発し、これらを組み合わせて、65-145MeVの電子ビームを使用した性能評価試験を実施した。LYSO結晶を使用した場合105MeV電子に対して5.7%のエネルギー分解能が得られることが判明している。 上記の研究と合わせて、検出器応答を理解するために不可欠なシミュレーションコードの開発も行った。ここでは研究グループメンバーに加えてロシアJINR研究所の協力研究者の協力を得ることで実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定していたプロトタイプ検出器による性能評価試験をほぼ予定通り終了した。 ストローチューブ飛跡検出器に関しては、ストローチューブ試験、プロトタイプによる基礎実験データの取得が既に終了している。予定していた真空試験を平成25年度内に終了することができなかったが、必要な機材の準備は完了しており平成26年度中初頭には完遂可能である。ただし、ストロー単体での圧力試験はすでに行い問題ないことは確認しているため、この真空試験も問題なく完了できるものと期待している。 結晶カロリメータに関しては取得したデータを詳細に解析することにより使用するべき結晶の選定を行う必要があるが、判断に必要な実験データの取得は既に終了しており、早急にこれを行うことが可能であると考えている。 検出器応答を理解するためのシミュレーションコードの開発はすでに終了しており、取得した実験データの解析に役立てるとともに、これを使用して今後の実機検出器設計の最適化を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に行ったプロトタイプ検出器データの解析を継続しながら、さらなる最適化を推し進めるとともに、検出器実機製作へ向けてのコンポーネントの量産、製作後のコンポーネントの性能評価システムの確立を行う。また、これに加えてビーム診断に必要となるスペクトロメータ磁石の整備に着手する。 ストローチューブ検出器の主要コンポーネントであるストローチューブに関しては、ロシアJINR研究所の研究者らの協力を得て量産体制を確立する。製作したストローはJINR研究所で検査した後、日本に輸送し実機サイズのプロトタイプに組み込む。平行して飛跡検出器からの電気信号を処理するためのエレクトロニクスの整備を実施する。 カロリメータ検出器に関しては、平成25年度に取得したデータに基づいて結晶の選定を行った後、大量生産を実施する。結晶を製造後に順次試験していくための結晶検査システムをJINR研究所の研究者と協力して完成させる。光センサーからの電気信号を処理するためのエレクトロニクスに関してもデータ収集システムとの融合性を考慮して、さらに改良を加える。ここでは今まで通りBINP研究所の研究者らとの協力関係により実施する。 スペクトロメータ磁石の整備に関しては、まずは必要となる超伝導電磁石用の冷却装置の準備を実施する。 これらに加えて、研究者間での情報の共有、成果の公表を行うためのWebページの整備を予定している。
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