研究課題
基盤研究(A)
本プロジェクトでは二つの中心課題を据えている。すなわち、1。大腸がんの浸潤、転移におけるケモカインCCL15と受容体CCR1の役割、及び2。Notch シグナル伝達経路による大腸がん浸潤、転移促進機構の研究である。1。については、1-1として、マウスで確立した上記メカニズムが実際にヒトでも作用していることを確認するために、ヒトの大腸がん培養細胞を用いた分子機構の解析と手術標本を用いた検索を行い、このことを確認した。(Itatani et al., Gastroenterol. 145: 1064-75, 2013). また、1-2として、ヒトCCR1遺伝子の発現制御域の上流をBacterial Aartificial Chromosome より分離し、下流にmCherry 蛍光タンパク発現ベクターを繋いでtransgenic (Tg) mice を作出し、このTg-mice を用いてCCR1発現細胞をFACSにて分離し、詳細な解析を行い、結果を原稿にまとめている(投稿準備中)。1-3として、Aesの発現制御に付いても、解析を進め、現在論文原稿を準備中である。2。については、Notchシグナル伝達の下流で誘導される遺伝子を同定し、さらにその下流で浸潤、転移に直接関わるタンパクを数種同定した。その結果、これらのうち一つの修飾が300例を超える大腸がん患者の手術標本の検索で予後と極めて強い相関をしめした (P < 0.01)。これに基づき、このタンパク修飾(ここではMarkerXとする)を診断マーカーとして特許を申請し、PCT出願による国際特許出願に関しても、JSTによる資金援助を頂くことが決まり、現在PCTの作業中である。また、学術的結果についても、論文を準備、投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
上記のように、本プロジェクトは予定していた項目に付いて着実に成果がでており、それらを論文としてまとめて居り、一部は既発表、一部は投稿中、更に一部は投稿準備中である。また、結果が臨床応用として重要な診断法に繋がるため、特許も申請し、PCTによる国際出願も進行中である。
現在進行中の成果をまとめ、論文として発表することに加え、特許申請で確保された権利を有効利用するため、この診断法の事業化を考慮中で、そのためには別途の開発資金が必要になると思われる。未発表の成果であるが、この診断マーカーは大腸がんだけでなく、胃がん、肺がんなど他のタイプのがんでもそれぞれ200例、300例を越す手術標本での検索を終了しており、有用な予後マーカーとなるデータを得ている。従って、この基礎研究の成果を臨床研究に結び付ける方向を計画している。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 産業財産権 (1件)
Gastroenterology
巻: 145 ページ: 1064-1075
10.1053/j.gastro.2013.07.033.