研究課題
口腔癌による骨破壊は患者の重要な予後因子と考えられているが、その詳細なメカニズムは十分に明らかにされていない。申請者は、ヒト口腔癌症例の外科病理学的解析を基盤として、口腔癌による骨破壊メカニズムを解析してきた。今年度は、1)癌・骨の間に介在する線維芽細胞の性状と機能、2)癌による骨破壊が癌細胞の動態に及ぼす影響、3)癌細胞が産生する新規骨吸収因子、4)口腔癌細胞の動態に及ぼす影響について解析し、以下の結果を得た。1)癌・骨の間に介在する線維芽細胞の性状と機能の解析:口腔癌細胞と癌/骨境界部の線維芽細胞の両者がTGFβを産生し、骨破壊に関与していることを明らかにしてた。また、GFP遺伝子を導入した骨髄由来線維芽細胞をヒト口腔癌を移植したヌードマウスの尾静脈から導入し、移植部の腫瘍間質に集積するかを検討中。2)癌による骨破壊が癌細胞の動態に及ぼす影響(vicious cycleの再検討):口腔癌の増殖およびRANKL発現に及ぼすTGF βの役割を解析した。3)ヌードマウスに口腔癌細胞を移植後、抗マウスRANKL中和抗体(間質細胞の産生するRANKLをブロック)と抗ヒトRANKL中和抗体(癌細胞の産生するRANKLをブロック)を投与し、癌細胞と間質細胞の産生する各々のRANKLがEMTを含めて癌細胞の動態に及ぼす作用を解析した。4)今までは口腔癌をヌードマウスの頭頂骨部位移植するxenograftモデルを実験に用いていたが、口腔癌の顎骨破壊に及ぼす影響をさらに詳細に解析するために、ヌードマウスの顎骨部に口腔癌を移植して骨破壊を解析する実験系の確立に成功した。4) 口腔癌と骨破壊部の間に介在する線維芽細胞におけるEMTの解析をおこなったが、これらの細胞がEMTを起こしているという明らかなエビデンスは得られなかった。
2: おおむね順調に進展している
口腔癌・骨の間に介在する線維芽細胞の性状と機能の解析と癌による骨破壊が癌細胞の動態に及ぼす影響(vicious cycleの再検討)に関する実験は順調に進行した。また、口腔癌の顎骨破壊に及ぼす影響をさらに詳細に解析するために、ヌードマウスの顎骨部に口腔癌を移植して骨破壊を解析する実験系の確立に成功した。口腔癌と骨破壊部の間に介在する線維芽細胞におけるEMTの解析をおこなったが、これらの細胞がEMTを起こしているという明らかなエビデンスは得られなかったので、口腔癌による骨破壊にEMTが重要な役割を担っている可能性は低いと判断した。
Xenograftモデルを用いて癌/骨境界部における線維芽細胞の由来をさらに詳細に解析する。さらに、口腔癌周囲に存在する線維芽細胞を中心とした間質細胞の性状もさらに詳細な解析を行う。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
Arch Oral Biol
巻: 60 ページ: 45-54
10.1016/j.archoralbio.2014
Biochem Bioph Res Co
巻: 458 ページ: 777-782
10.1016/j.bbrc.2015.02.013
Virchows Archiv
巻: 465 ページ: 35-47
10.1007/s00428-014-1594-6
Scientific Reports
巻: 4 ページ: 6044
10.1038/srep06044.
Mol Nutr Food Res
巻: 59 ページ: 386-400
10.1002/mnfr.201400164.