研究課題/領域番号 |
25257304
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中田 典秀 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00391615)
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研究分担者 |
田中 宏明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70344017)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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キーワード | 環境モニタリング / 人為起源汚染物質 / 医薬品 / 汚染指標 / 流域評価 / 韓国:イギリス:ベトナム:バングラデシュ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、下水処理場等による汚水の処理率およびその上昇率の異なる国々において、生活排水による汚染水塊の起源推定・区分、処理レベルの指標となりうる残留医薬品成分を選出し、それらを指標とした河川流域の汚水処理に対する整備状況、整備の効果・進捗の把握等の診断手法を開発することである。 平成26年度は、バングラデシュ(乾季)とイギリス(夏季と冬季)にて調査を行った。バングラデシュでは、海外研究協力者であるゴッシュ博士(ジョソール科学技術大学)の協力のもと、6月にダッカへの流入および流出河川、ダッカ唯一の下水処理場にて医薬品類の存在実態調査結果を行った。得られた試料は、ダッカ大学にてろ過し、吸着材を充填した固相カートリッジへ濃縮・保冷し、日本に持ち帰った。帰国後、研究代表者の所属する京都大学流域圏総合環境質研究センター(RCEQM)にて固相カートリッジから医薬品類を抽出し、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)で約70種類の医薬品類の分析を行った。イギリスでは、海外研究協力者であるジョンソン博士(Centre for Ecology & Hydrology:CEH)の協力のもと、テムズ川中流から上流域の支川と本川にて表層水を採取するとともに、オックスフォードシャー州周辺部の下水処理場流入下水と処理水を2014年8月と2015年1月に採水した。採水は、CEH所有のコンポジット採水器を使用し、残留医薬品類の日変動、日平均値を把握した。いずれの調査地においても、流域人口や下水処理普及率などの情報収集も行った。過年度までの調査結果と本年度の調査結果をもとに、各国の河川および下水処理場での検出率、下水処理場での除去率をもとに、生活排水による汚染水塊の起源推定・区分、処理レベルの指標となりうる物質をそれぞれの調査地に対して選出(1次)した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H26年度に実施予定であったイギリスでの調査(冬季)が、記録的豪雨により延期となったが、H27年度に実施できた。また、H27年度に当初より予定していたイギリスでの調査(夏季)ともに、海外研究協力者であるジョンソン博士(Centre for Ecology & Hydrology:CEH)の協力により、CEHが定期的に行っているテムズ川の上中流域全域での採水試料を分譲してもらう事が可能となり、当初予定よりも広範囲および高密度の調査が可能となった。さらに、CEHが管理する河川流量を活用できる事になり、流域情報との比較が可能となった。H26年度に実施予定であったバングラデシュでの調査(乾季)が、大統領選挙に伴うデモにより延期となったが、H27年度に実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、イギリス(夏季)、バングラデシュ(雨季)、韓国(秋季)にて調査を行う。 イギリスでは、海外研究協力者であるジョンソン博士(Centre for Ecology & Hydrology:CEH)の協力のもと、8月に過年度までの調査同様の調査を行う。バングラデシュでは、海外研究協力者であるゴッシュ博士(ジョソール科学技術大学)の協力のもと、9月に過年度同様の調査を行う。韓国では、海外研究協力者であるハン教授(ソウル市立大学:UOS)の協力のもと、10月に過年度同様、ソウル市を流れるハン川の上流河川であるキョガン川流域の本川および流域の下水処理場にて調査を行う。いずれの調査地においても、流域人口や下水処理普及率などの情報収集を行う。H26年度までの調査において、各国の河川および下水処理場での検出率、下水処理場での除去率から、それぞれの調査地に対して選出(1次)した生活排水による汚染水塊の起源推定・区分、処理レベルの指標物質の有効性もしくは限界について検討する。 各調査において、得られる範囲で下水道普及率や汚水処理整備率等の統計データを収集するとともに、各国の調査対象流域における生活排水由来の汚染指標物質となりうる医薬品類を選出するための基礎データを集積する。また、得られた結果を取りまとめ学会発表を行う。
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