研究課題/領域番号 |
25282154
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
小森 優 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80186824)
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研究分担者 |
来見 良誠 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (70205219)
森川 茂廣 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60220042)
田中 弘美 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (10268154)
田川 和義 立命館大学, 立命館グローバルイノベーション研究機構, 准教授 (40401319)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 異形器官 / バリエーション / 手術シミュレーション / 3次元モデル |
研究概要 |
本研究を構成する3つの要素に基づいて、平成25年度の研究実績を述べる。 ・異形器官3次元モデルの作成については、今年度の研究では当初の胆管の異形(以降、バリエーションと呼ぶ)の3Dモデルライブラリ構築に限定するとした計画に、胆管周辺の血管走行のバリエーションを加えることとした。本研究の意義が最も顕著となる適用は、バリエーションを組み込んだ手術シミュレータによる解剖構造の誤認に起因する医療事故の防止であると考えている。従って、管腔構造と共に血管走行を組み込むことが重要であると考えるに至たり、計画を変更した。胆管のバリエーションについては低頻度とされているもの以外の?種の3Dモデルを作成した。一方、血管走行のバリエーションは種類が多く、そのうち?種のモデル化が完了している。モデルを作成した胆管と血管のすべての組み合わせが存在しうるかは、まだ確認できていないが、計算機上はどのバリエーションの組み合わせでも術野モデルを生成するシステムを構築中である。 ・異形モデルのライブラリ化については、作成した3Dモデルをライブラリ化するために、形状データと共に保存すべき情報とそのデータ形式の検討を続けており、実装は次年度以降に行う。 ・シミュレーション術野への組込みでは、手術シミュレータにこれまで独自に開発してきたものを用いている。術野の立体形状と力学特性は理化学研究所のBodyParts3Dに基づいて作成したものを用いた。前述のバリエーションモデルの術野シーンへの組み込みはシミュレーション開始時に動的に行えることを目標としているが、現時点では事前にバッチ処理を行っている。 以上のように、平成25年度では、胆管と周辺血管のバリエーション3Dモデルを作成し、術野合成およびシミュレータ上での動作を試行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バリエーション(異形)3Dモデル作成は、胆道とその周辺血管の一連のモデル群のみであるが、当初の予定に加えて血管走行のモデルを加えたことで、より充実したものとなった。 ライブラリ構築については、ノーテーションや付随情報を記載するタグの持ち方や3次元データのノード配置(密度)の最適化については検討段階で、実装はできなかった。特に3次元ノードの最適化については、シミュレータへ組み込んだ結果から判明する問題が表れているので、研究完了まで継続的に検討と実装を繰り返すこととした。 手術シミュレータへの組込みは、試行レベルでは成功しているが、より高速で自然な形状の術野モデルの合成や変形シミュレーション時の動作で適切な計算量に抑制できるようノード配置の最適化などの課題を多く残している。 また、手術シミュレータ上でバリエーションを提示する際に、実際に近い状態でシミュレーションができるよう、脂肪組織、結合組織を模した構造物で覆い、剥離処置を行わなければその解剖構造が判別できないように術野シーンを合成した。一部未完成であるが、試行実験で動作を確認した。このように本来のバリエーションライブラリの構築そのものではないが、ライブラリの有用性を示すため手術シミュレータの改良を並行して進めている。
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今後の研究の推進方策 |
バリエーション(異形)3Dモデル作成については、平成26年度は胆道部分を更に充実させるとともに、他の臓器、器官でのバリエーションモデルの作成を手掛けたい。既に、腎臓動静脈、心臓周辺の血管群、脳血管のバリエーションモデルを一部作成した。現有のシミュレータでは心臓や脳手術に対応できないので、適切な対象に絞り込みたい。 ライブラリの構築については、ノーテーションや付随情報を記載するタグをXML形式で持てるように設計を行う。ライブラリで重要な点は3Dモデルの読み込みを高速に行える構造にすることと、他の用途に使いやすい標準形式で出力できることと考えている。実装は容易であるが、シミュレータへの組み込み過程からのフィードバックが考られるため、優先順位を下げ、最終年度までに完成することとした。 手術シミュレータへの組込みについては、研究自身の有用性を示すために特に重要と考えている。胆管と周辺血管の異なるタイプのバリエーション同士の組み合わせによる術野シーンの合成といった問題を平成26年度中に解決し、実装する予定である。前述のバリエーション器官を取り巻く脂肪、結合組織の付加のように、研究課題を若干逸脱する内容にも研究対象を広げたい。
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