研究課題/領域番号 |
25282190
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
菊 幸一 筑波大学, 体育系, 教授 (50195195)
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研究分担者 |
笠野 英弘 筑波大学, 体育系, 特任助教 (20636518)
高橋 豪仁 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (40206834)
清水 紀宏 筑波大学, 体育系, 教授 (50196531)
海老島 均 成城大学, 経済学部, 教授 (60203650)
高橋 義雄 筑波大学, 体育系, 准教授 (70303592)
齋藤 健司 筑波大学, 体育系, 教授 (80265941)
成瀬 和弥 筑波大学, 体育系, 助教 (80400703)
奥田 睦子 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (90320895)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 新しい公共 / 民間スポーツ組織 / 公共性 / 国際比較 / イベント型ガバナンス / クラブ型ガバナンス / 社会学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2010年当時の民主党鳩山政権によって打ち出された「新しい公共」宣言がもたらすその後のスポーツ政策への影響に鑑み、その担い手として期待されている民間スポーツ組織の公共性からみた構造や機能、とりわけ行政組織(官)との関係や民間スポーツ組織間相互の「連携・協働」をめぐって引き起こされるさまざまな葛藤や課題を明らかにすることである。 3年次では、我が国における「新しい公共」形成を担う民間スポーツ組織の公共性を担保するガバナンス・システムをビジョンとして示すことを目指した。ヨーロッパにおけるスポーツ組織の成立が、当初から政治分野と密接に関連しながらその攻防によって今日に至っていることから、スポーツ組織の構造自体がイベント型対応ではなく、メンバーシップによる自立的な財政的基盤と自律的な機能的役割によってガバナンス・システムが構築されていることが明らかとなった。これと比較して日韓中に代表されるアジア圏では民間スポーツ組織が教育分野を組織的基盤として担保される傾向が強く、その教育的公共性がスポーツ組織の公共性に強く影響を与え、むしろ「新しい公共」概念にもとづく組織的機能の発揮を阻害している傾向がみられることが明らかとなった。また他方では、これとの関連で国家的な要請によりスポーツが容易に政治化される傾向があり、いわゆる国家的公共性を担保する政策追随型を特徴とする民間スポーツ組織の性格が垣間見られた。 したがって、我が国のスポーツ組織の公共性を「新しい公共」概念によって構築していくためには、従来の学校や企業への組織的依存によるイベント型ガバメントから学校や企業との組織間協働によるクラブ型ガバナンスへ、さらにはスポーツ統括組織によるスポーツ白書づくりと政策提言機能の強化が求められるとの結論が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目的であるアジア圏の調査が完了し、そのガバナンス・システムの特徴について、ヨーロッパとの比較考察が可能となるデータを得ることができた。 また、昨年度からの懸案であった我が国のスポーツ組織調査は日本体育協会の協力により調査を終了し、当初見込んだ調査数は下回ったものの、それなりの分析結果と結論が得られた。 したがって、本年度の目的であった今後の我が国における民間スポーツ組織の「新しい公共」を担保するためのガバナンス・システムのビジョンを、ある程度提言するところまでに至ることができた。 しかし、ヨーロッパにおける最終調査が、当該年度に発生したテロ事件の発生により急きょ中止せざるを得なくなったことから、積み残しの調査がまだあり、この結果を反映させた報告書を完成させる必要があるため「おおむね」順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初研究の最終年として設定していた研究予定が、当該年度に発生したヨーロッパにおけるテロ事件により延期となったため、本調査を最終年度に行い、これまでの調査結果と合わせて最終的な結論を導く予定である。 また、延長された年度において、これまでの研究成果をまとめ、調査報告書を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初最終年度である平成27年度に予定していたヨーロッパの最終調査が、テロ事件の発生により遂行できなくなりその分の旅費が執行できなくなったため。 また、それに伴って最終報告書の印刷が延期となり、印刷費の執行ができなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
ヨーロッパ調査費用として50万円程度、残りを最終報告書作成のための費用として執行する予定である。
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