研究課題
本研究は、国境を越えて移動する人の権利をどのように守ることができるのかという問題を移動する人の社会保障制度に注目して、国家ごとの制度である社会保障制度を国家間でどうのように架橋できるかを検討しようとするものである。この研究では、国家間の制度の隙間に陥る人の社会保障制度が、民族や地域を臍帯とするトランスナショナルなコミュニティによって代替されていることを明らかにした。しかし、他方でこのトランスナショナルなコミュニティによる国家の代替機能によって、移動先のコミュニティへの統合へのインセンティブが弱くなり、隔離・分断された状況を生み出していることも明らかになった。隔離・分断状況は、それぞれの国における市民権の格差にもつながってくる。欧州では、市民権の制限が公然と行われるようになっており、社会保障制度へのアクセスをより難しいものとしている。これに対処するために、EUや各国政府は客観的な統計によって移民に対する排斥に根拠がないことを示し、国民を説得しようとする一方で、移民の社会保障を制限する政策をとり、矛盾した対応を示している。さらに国際機構では「混合移動」と「人権基盤アプローチ」いう言葉によって移動する人々の救済の範囲を拡大するという方向性を打ち出しているが、ここでも「セキュリタイゼーション」との相克となっている。研究成果は、2015年9月に山形大学で開催された国際シンポジウムにおいて公表した。このシンポジウムには送り出し国のフィリピンのサンカルロス大学から報告者1名を含む4名の研究者と受け入れ側で移民・難民問題に直面しているチェコのプルキニェ大学から1名の研究者を招聘し、さらにこのプロジェクトメンバーからも4人が報告を行い、議論を重ねた結果、心理的なバリアが現状認識に及ぼす影響を無視できない、対話の回路は国家主導のみでは十分な成果が得られないという結論に達した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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