研究課題/領域番号 |
25284015
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷山 洋三 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10368376)
|
研究分担者 |
得丸 定子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (00293267)
鈴木 岩弓 東北大学, 文学研究科, 教授 (50154521)
BECKER CARL.B 京都大学, こころの未来研究センター, 教授 (60243078)
奥井 一幾 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 講師 (90755969)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 宗教的ケア / グリーフケア / スピリチュアルケア / 臨床宗教師 / チャプレン / 臨床宗教教育 |
研究実績の概要 |
宗教的ケアの有用性に関する諸課題については、次の点が重要な成果である。 (1)経文聴取による悲嘆軽減効果を唾液中のストレスマーカー等の変化によって計測した研究の口頭発表2件および論文投稿、(2)悲嘆に関するこれまでの国内外の知見をまとめ、海外文献を和訳して出版、(3)被災地での電話相談活動における宗教的ケアの方法および宗教協力の意義を明らかにした口頭発表と論文投稿、(4)チャプレンや宗教的ケアに関する海外文献の収集、(5)震災後の宗教的ケア活動について日本語で論文掲載、さらに同内容を香港の雑誌に中国語で掲載、(6)在宅緩和ケアにおける臨床宗教師の介入事例をポスター発表。(7)英国におけるホスピスチャプレンの実態調査と、キリスト教会・ヒンドゥー教寺院・モスクなど関係者による宗教協力の実態調査、(8)英国でのセミナーにおける臨床宗教師活動の紹介 臨床宗教師の教育に関する諸課題については次の点が重要な成果である。(8)入棺体験による心理的変化の測定実験を実施し、テキスト分析によりその効果を分析中、(10)臨床宗教師とその教育方法、およびスピリチュアルケア・宗教的ケアの実践に関する入門書の出版、(11)宗教者の視点によるスピリチュアルケアの定義について研究発表、(12)死後の不安に対応する具体的な対応法の開発、(13)動物飼育と食に関する研究、(14)チーム医療に関する研究、(15)仏教学における臨床宗教師の位置づけに関する口頭発表2件と論文投稿、(16)臨床宗教師教育に関する研究。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
宗教的ケアの有用性に関する研究のうち、心理的尺度とバイオマーカーにより経文聴取の悲嘆軽減効果を測定する実験は、パイロットスタディとしては十分な成果を上げており、本研究の中軸をなす研究として論文化を進めており、翌年度にはこの結果を反映した本実験を行う予定である。東日本大震災後の宗教者による被災者支援活動に関する研究についても、慰霊・カフェ活動・電話相談・祈りなどをキーワードとして論文を発表しており、予定通りの成果を上げている。その他、ホスピス、在宅ケア、被災地等における国内外の宗教的ケアの実際、その有用性に関する研究も進展している。なお、入棺実験では予定よりも被験者が少なかったためにデータに不足が生じたが、テキスト分析では有益な成果を得ることができそうである。公的な統計を用いた分析については、必要なデータを収集することに難航している。The 10th International Congress on Pastoral Care and Counsellingには諸事情により参加できなかった。 臨床宗教師の教育に関する研究では、スピリチュアルケアや宗教的ケアの臨床での具体的な応用方法について、口頭発表、論文、出版などで発表しており、予定通りの成果を上げている。臨床宗教師教育プログラムの大学院標準型についてはひな形を作成し、同様のプログラムを実施・準備している6つの大学の担当者とともにプログラム内容を検討、助言した。これに関わるE-learning教材としてDVD「日本人とスピリチュアリティ」を原案監修した。その他にも準備をしている。 以上のように、やや遅れている研究もあるものの、悲嘆に対する宗教的ケアの有用性を実証する研究は予想以上の成果を上げている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までの調査結果および収集したデータに基づいて、次の研修を推進する。(1)経文聴取の悲嘆軽減効果を測定するパイロットスタディを進展させるべく、実際のペットロス経験者に協力してもらい、7月に経文聴取の効果を測定する実験を行う。バイオマーカー(αアミラーゼ、sIgA)と、質問紙(ストレス尺度、不安尺度、共感尺度など)によって計測する。(2)入棺実験の結果を分析し、8月の仏教看護・ビハーラ学会で口頭発表する。(3)これまでの成果について、6月に香港で開催されるChanging Practices of Health and Family in Japanのシンポジウムで発表する。また、9月の日本宗教学会でパネル発表を行う。(4)経文聴取の悲嘆軽減効果を測定するパイロットスタディの成果を、英語雑誌に発表する。(5)宗教的ケアの有用性を示すことのできる公的な統計データの収集に努める。(6)臨床宗教師の教育プログラムの大学院標準型の実施計画の助言と推進、およびこれに関わるE-learning教材開発を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
8月に実施した入棺実験において、予定より被験者が集まらずバイオマーカーのデータ分析の費用に余剰が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記の余剰分を、7月に行うペットロス読経実験におけるバイオマーカーのデータ分析に使用する。これによりより精度の高いデータを得ることができる。
|