本研究は、「多文化共生」イデオロギーが流布する前の日本の近代都市の「多文化状況」を個別の地域社会の社会史を集約的な共同調査によって明らかにすることを目的とする。地域社会、マイノリティのネットワーク、マイノリティ間の関係、母社会との相互関係に注目し、日本社会の多文化化の実証的モデルを検討した。具体的な研究対象は、多文化共生イデオロギーの発祥地とも言える神戸・阪神間地域であり、南西諸島、コリアン移住者と地域社会の関係、移住者と出身社会との関係にについて、これまで二者間関係的にとらえられてきた移住者の生活世界が、中間移住地を含めた重層的な「移動空間」から成立していることを明らかにした。
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