研究課題/領域番号 |
25285013
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
大田 直史 龍谷大学, その他部局等, 教授 (20223836)
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研究分担者 |
青山 公三 京都府立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60467347)
川合 敏樹 國學院大學, 法学部, 准教授 (90515537)
人見 剛 立教大学, 法務研究科, 教授 (30189790)
本多 滝夫 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (50209326)
前田 定孝 三重大学, 人文学部, 准教授 (10447857)
山下 竜一 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60239994)
下山 憲治 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00261719)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 公法 / 行政法 / 防災法 / 災害対策 / レジリエンス / 地域防災計画 / 災害復興 / リスク管理 |
研究概要 |
平成25年度には、主に、過去の大規模災害被災地をはじめとする国内の地方自治体における東日本大震災後の地域防災計画の見直し状況の調査と東日本大震災以後の防災立法の動向分析や災害に対するレジリエンス(災害からの復元力)についての文献研究を中心におこなった。 1)国連の国際減災戦略およびアメリカの連邦防災政策において,重要インフラの防御を中心とした災害対策から,地域のコミュニティの「レジリエンス」を高める災害対策への転換が強調されてきていることを文献研究から明らかにしてきた。その観点から,東日本大震災後の災害対策基本法の改正,「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」の評価を試みてきた。 2)北海道奥尻町における津波被害からの復興プロセスにおける住民の参加と現在のハード・ソフト両面での防災対策,災害対策基本法改正に先んじて北海道石狩市で地域防災計画の改訂に際して策定された地区防災計画についてその策定の過程における住民参加の実態と計画の内容,高知県黒潮町における住民の避難カルテ作成の取り組み,高知県および四万十市における津波防災に関する計画とその策定過程における住民参加の実態,等について現地を訪問して資料提供を受けるとともに自治体防災担当職員から聞き取り調査を行い,自治体より狭域の地区等の単位での防災計画の意義とその策定手続のあり方,有効性を確認した。 3)ドイツにおける災害に対する公共私の責任の分担のあり方に関する議論について,マインツ大学マティアス・コルニルス教授の,河川氾濫災害を中心とする国家賠償責任と災害復旧に関する基金制度についての報告を受けての研究会を実施し,同国の防災政策のにおける国の責任の考え方を確認するとともに平成26年度の調査への協力方依頼した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3回にわたって全体の研究会を開催してきた。第1回では,全体の研究計画と役割分担の確認を行うとともに,日本の災害対策関係立法動向についての検討を行うとともに,アメリカの連邦レベルでの防災に関する政策動向について共有化を図った。第2回では,地震・津波被害の被災地であった北海道奥尻島の復興過程での住民参加の状況と復興後の町の現状,現在の災害対策についての調査結果を検討するとともに共有化を図った。第3回では,マインツ大学コルニルス教授の報告に基づいてドイツについての国の災害に対する賠償責任についての検討を行い,ドイツの公私の洪水に対する責任の分担のあり方について意見交換を行うとともに,平成26年度の独・米両国調査の調査項目について打ち合わせを行った。 各研究会の間には,文献研究のため,災害に対するレジリエンスに関して主にアメリカで刊行されている学術書を中心に収集するとともに,日本についてもレジリエンス,国土強靱化基本法,防災法に関する最新の文献および政府関係機関の報告書・答申等も含めて収集し,検討を行ってきた。また東日本大震災後の地域防災計画の改訂に関わって注目すべき自治体への訪問調査をそれぞれ2~3人の共同研究者で行い,北海道石狩市の地区防災計画の策定過程の調査および高知県黒潮町における避難カルテ作成の取り組みに関する調査のまとめは,公表には至っていないが本研究の共同研究者の多くも参加する行政法の研究会において報告し,検討した。 平成26年度に行うドイツおよびアメリカにおける災害対策に関する調査については,共通して調査すべき基本項目を平成25年度内に打合せたとともに,対象機関を選定し,連絡を取り始めた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度,米国およびドイツの災害法制に関する次のような主な項目を明らかにするために訪問調査を行う予定であり,全共同研究者がいずれかの国の調査に参加する予定である。1)応急体制法制と民間組織との協働,2)災害復興法制における被災地支援と被災者救援,3)災害に対するリスク管理と危機管理,である。 米国調査では,(1)ニューヨーク市に所在する,①同市危機管理室,②アメリカ赤十字ニューヨーク事務所,③市民部隊事務所,④コミュニティ危機対応チーム,⑤ウエストチェスター郡危機管理室,⑥州危機管理部局ニューヨーク支所等を,(2)ワシントンDCに所在する,⑦連邦危機管理庁(FEMA)⑧アメリカ赤十字首都地域事務所,⑨全米広域行政圏協議会,⑩国際危機管理官協会,⑪ニューオリンズ市役所危機管理担当部局及びハリケーンカトリーナ復興担当部局,⑫ルイジアナ州危機管理担当部局及びハリケーンカトリーナ復興担当部局等を訪問し,資料の収集および聞き取り調査を実施する予定である。 ドイツ調査では、①ドイツ郡会議,②ボンの連邦住民保護・災害救助庁(BBK),③マインツ大学のコルニルス教授,などを訪問し,資料の収集および聞き取り調査を行う予定である。 それぞれ調査前に質問事項を打ち合わせ,調査参加者各人が結果のとりまとめを担当する分担責任を明確にする会議を行うとともに,平成26年度内に調査の成果について,上記の主な調査項目に即して,各自の担当部分について,レジリエンス,地区の自立・分散した応急対応,防災計画の策定における住民の参加,などの観点でそれぞれの国の法制度および災害対応の特質や普遍性等を取りまとめるとともに,全体の研究会を2回程度開催して検討するとともに共有化し,日本における災害対策法制との比較研究の準備を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度に予定しているドイツおよびアメリカの訪問調査について,燃油サーチャージの値上がりや円安の影響で旅費等が当初想定していたよりも多くかかる可能性があることや通訳を依頼する必要性が生じる場合も考えられ,その場合人件費が当初立てていた来年度の予算金額の枠内では不足も予想される状況があり,平成25年度について支出を控えられる部分については控えめに執行することを心がけてドイツおよびアメリカの調査にかかる旅費や人件費・謝金に回すことを考えたことが次年度使用額を生じた主な理由である。 平成26年度に実施するドイツおよびアメリカ訪問調査の際の旅費や通訳者の人件費・謝金等として,当初の予算額に上乗せして使用する予定である。
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