研究課題/領域番号 |
25285140
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
辻山 栄子 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (50114020)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 財務会計に対する社会的要請 / 財務会計の概念フレームワーク / 意思決定有用性 / 受託責任会計 / 会計基準の国際比較 / 会計基準のコンバージェンス / 国際財務報告基準(IFRS) |
研究実績の概要 |
本研究は、現代の財務会計に対する社会的要請に関する調査研究を目的にしている。この目的を達成するため、2014年度には次のような作業を行った。 (1)国内の財務諸表作成者および利用者(アナリスト)の財務会計に対する意識調査を目的にして次のようなアンケートを実施した。①財務諸表作成者と利用者用のQuestionnaire(各8ページ)を作成し、計4,193通(作成者3471通、利用者722通、宛名不明者69通は外数)の質問票を発送した。発送先については、作成者については日経ProQuest(2014年12月23日現在)に登録されているすべての企業、アナリストについてはアナリスト便覧(2013-2014年版)に掲載されているすべての証券アナリストを対象とした。②上記の郵送先から計565通13.47%(作成者469通13.5%、利用者96通13.3%)の有効回答を回収した。③上記の回収データの入力を完了し、現在統計的な分析作業を実施中である。 (2)アンケート調査のために上記①の作業を行う過程で、研究分担者および連携研究者により計14回の会合を開き、次の作業を行った。①問題意識の共有、②Questionnaireの設計、③アンケート調査の統計処理に関する外部有識者のアドバイスの取得、④統計処理のデザイン等。それに加えて、本テーマに関連して科研費メンバーが執筆した論文を中心に計5回の研究会を実施した。 (3)これまでの科研費課題において構築したweb上の研究拠点(早稲田大学会計研究センター:http://w-arc.jp)を通じて、本科研費の活動を通じた成果を情報発信した。①本年度に注力したアンケートのQuestionnaireをサイトにアップした。②本科研費の研究協力員の公表した日本語論文の英訳をサイトにアップした。同論文は、海外ジャーナルに投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内の調査は順調に進んでいる。海外の調査については、当初予定していたアンケート調査が必ずしも有効な手段ではないこと(アンケート回収率が極めて低いこと)が検討過程で判明したので、現地インタビュー調査に切り替えることにした。この調査は2015年度に実施する予定である。 (1)本年度は2013年度から準備してきたアンケート調査を実施した。研究の成否は、いかに調査目的に適合的な質問票(questionnaire)を有効にデザインできるかに依存しているという認識のもと、質問票の立案に多くの時間を費やしたが、最終的には作成者用と利用者用に一部異なる質問票を作成して発送した。質問票の発送先は、日経ProQuest(2014年12月23日現在)に登録されているすべての企業、アナリストについてはアナリスト便覧(2013-2014年版)に掲載されているすべての証券アナリストとした。計4,193通(作成者3471通、利用者722通、宛名不明者69通は外数)を発送し、計565通13.47%(作成者469通13.5%、利用者96通13.3%)の有効回答を回収した。この回収率は、組織に依存しないアンケート調査としては異例の高さであり、統計的な分析に堪えうるデータの収集ができたと考えられる。研究の最終年度である2015年度にはこのデータ分析を行う。 (2)一方、海外の作成者、利用者、研究者の意識調査については、アンケート調査によっては必ずしも有効なデータの回収ができないことが検討過程で明らかになった。そのため、海外については現地でインタビュー調査を行う方針に切り替えた。この調査は2015年の8月~9月に行う予定である。 (3)2014年度にも引き続き、本研究課題を通じて構築したweb上の研究拠点(早稲田大学会計研究センター:http://w-arc.jp)を通じて研究成果を情報発信した。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度においても、本研究課題を通じて構築したweb上の研究拠点(早稲田大学会計研究センター:http://w-arc.jp)を通じて、現代会計に対する多様なニーズに関する研究成果を情報発信するとともに、次の4つの活動を遂行する。 (1)2014年度に国内の財務諸表作成者および利用者に対して実施したアンケート調査データを用いて、統計的な分析を加える。 (2)2015年の夏に海外の会計基準設定主体、財務諸表の作成者、利用者、および研究者を対象としたインタビュー調査を実施する。それに加えてアメリカ会計学会のメンバーに対するインタビューも実施する。 (3)上記の(1)と(2)の調査の結果を分析し、①現代の財務会計に対する真の意味での社会的な要請はどのようなものであるのか、②それは現代会計における2つ基本思考が前提としている社会的な要請のどちらに近いのか、③そしてそれは時代を超えた普遍性を有しているのかについて、一定の結論を導き、その成果を報告書としてまとめてweb上で公表すると同時に、学内紀要等を通じて公表する。 (4)2014年度は本科研費研究課題が引き継いだ2010~2012年度の課題研究(基盤研究(B)22330140)「財務会計における基礎理論の国際比較」における問題意識ならびに本課題研究のテーマを掘り下げることを目的に「国際財務報告基準(IFRS)の理論的分析」というテーマで研究会を開催したが、その成果を原稿の形にする作業が完了しつつある。2015年度にはその成果を書物として刊行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度においても海外における調査研究を実施する可能性があったが、2014年度は国内のアンケート調査を優先したため、メンバーの海外出張旅費ならびにアンケート調査会社に対する支出を2015年に繰り越した。2015年度には、メンバーで海外現地調査を実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
〇2015年8月 研究代表者と研究分担者2名、そして連携研究者1名の計4名で米国シカゴを拠点として、米国の会計学研究者、米国会計基準設定主体等を訪問してインタビューを実施する。(本件に関する所要予算200万円) 〇2015年9月 研究代表者と研究分担者1名の計2名で欧州(ドイツ、フランス、イギリス)を訪問し、欧州の会計基準設定主体、財務諸表利用者、財務諸表作成者に対するインタビューを実施する。(本件に関する所要予算150万円)
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