わが国が明治時代から実践してきている授業研究は、The Teaching Gap(1999)を契機としてLesson Studyとして海外で急速に普及してきているが、その質が問題となっている。 本研究は、授業研究を評価する枠組みを理論的かつ実証的に構築した上で、日本だけでなく米国・豪州をはじめ東南アジアやアフリカ諸国における授業研究を実際に評価し、その国際的活用を目指す。本年度の成果は以下の通りである。 まず、授業研究を評価する枠組みを理論的に構築するために、先行研究の総括整理を行い、海外の研究協力者と研究協議を重ねた結果、わが国の授業研究の根底にある概念を顕在化させることができ、授業研究の構成要素と構造を特定し、研究成果を学術雑誌に投稿、受理されて掲載された。次に、授業研究を評価する枠組みを実証的に構築するために、学習指導案検討会議・研究授業・研究協議会の観察記述研究を展開し、特に学習指導案検討会の実際に焦点を当てて、観察記述研究を行い、研究成果を国際学術雑誌に投稿、受理されて掲載された。さらに、授業研究による教師の変容をとらえる枠組みを構築して、教師の信念と教師集団の規範に関する質問紙調査とインタビュー調査を実施した。その成果の一部については、国際学会で発表した。 本研究から、授業研究の評価を授業自体の質的変容と関連させて捉えることの重要性、さらには研究授業後の研究協議会の質をとらえる枠組みを構築して授業研究を評価することの重要性が示唆された。
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