研究課題/領域番号 |
25288102
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
大崎 茂芳 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (90273911)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 合成繊維 / 加圧 / 紐 / 隙間 / 力学特性 / ポリエチレンテレフタレート |
研究実績の概要 |
繊維は集合体で使用されるのが一般的であるため、繊維集合体の力学特性が非常に重要となっている。ところが、繊維の力学特性に関しては、古くから単繊維に焦点を当てて行われてきた経緯がある。その理由は、繊維の集合体となれば用途が多岐にわたることと、繊維集合体間に発生する隙間の多少によって特性が大幅に異なるため、共通の基準の特性を求めるのが難しいところにある。ここで重要なことは、実用的な繊維集合体の力学特性をいかに用途に応じて改善するかである。その一つには、力学応力を上げるには繊維間の隙間を軽減することにある。ところが、古くから繊維間の間隙は存在するのが当たり前で、隙間を軽減するという発想はあまり見られなかった。本研究では、捩じる度合いをコントロールすることによって隙間を軽減することに焦点を当てた。前年度は、ナイロンの力学特性を改善するために、繊維の変形を含めた観点から種々の実験を行った。 本年度は、ポリエチレンテレフタレート繊維をサンプルとして用い、その集合体に焦点を当てて実験を行うことにした。ポリエチレンテレフタレート繊維の集合体では、まずは繊維の本数を変えた。次に、ねじり度合いや処理温度も調整しながら繊維集合体の束から紐を作った。そして、繊維集合体から作った紐の張力ー伸び曲線を測定し、その強度および応力を求めた。その際、紐を切断してその断面の繊維間の隙間を電子顕微鏡にて観察し、紐の断面積および隙間の割合を計測した。 また、ポリエチレンテレフタレート繊維の軸方向の弾性率を計測するとともに、軸と垂直な方向の圧縮弾性率を計測し、紐における隙間を軽減する適正な方策に対するヒントを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリエチレンテレフタレート(PET)における実験では、束にする繊維の本数、力学強度測定、紐の断面積の組織観察、高温処理実験などを行い、どの条件で隙間が軽減できるのかについてのヒントが得られ、研究はおおむね順調に推移している。また、PETの圧縮弾性率や繊維軸方向の弾性率を求めることができ、繊維集合体の隙間の軽減に関するヒントが得られてきた。
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今後の研究の推進方策 |
ナイロンやポリエチレンテレフタレートにおける結果を参考にしながら、レーヨンなどの繊維集合体の力学特性をねじり方を調べて、力学特性を計測するとともに、断面を電子顕微鏡で調べて、繊維間の隙間を軽減する有効な方法を模索したい。また、クモの糸との比較を行いながら、どのようにすれば繊維集合体の隙間の軽減がさらにうまく遂行できるのかを調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
合成繊維集合体の研究をするために、クモの糸を比較サンプルとしている。クモの糸は一年のうち、糸取りに適した旬といわれる時期は限られている。また、台風などの気候によってもクモ採取は大いに影響を受ける。実際に、悪天候ならクモの採集はできなくなる。26年度は天候の影響を受けたため、クモの採集費用として次年度に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は台風などの天候悪化のないことを期待し、クモの採集費用として繰越金を使用したい。
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