研究課題/領域番号 |
25290036
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
阿部 幸一郎 東海大学, 医学部, 准教授 (90294123)
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研究分担者 |
羅 智靖 日本大学, 医学部, 教授 (60230851)
田嶋 敦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10396864)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 疾患モデル動物 / 関節炎 / ENUミュータジェネシス / マウス遺伝学 / 実験動物学 |
研究概要 |
自己炎症性症候群とは、内的要因によって発症する周期的あるいは慢性的な炎症性疾患である。本研究では、自己炎症性疾患症候群のモデルとしてAli18とAli14と呼ばれる2つの変異マウス系統を用い、それぞれの原因遺伝子間の相互関係を解析するとともに、マスト細胞を中心とした炎症発生の分子メカニズムを明らかにする。そのため、研究計画書にある1)二重変異マウスの表現型解析、2)原因遺伝子タンパク間の相互作用解析、および3)変異マウス骨髄よりのマスト細胞培養実験について実験を開始した。 今年度はAli18及びAli14マウス系統とW/Wv系統との二重変異マウスを作製し、その表現型を解析した。Ali18系統とW/Wv系統との交配は、既にパイロット実験も行い、交配規模を拡大して二重変異マウスを複数得ている。それらの個体で関節炎のスコアを計測するとともに、四肢末端部の組織切片を作製してマスト細胞をトルイジンブルーで染色を行っている。Ali14マウス系統においては、パイロット的にW/+あるいはWv/+マウスとの交配を開始した。 原因遺伝子タンパク間の相互作用解析では、Ali18の原因遺伝子のコーディング領域を発現ベクターにクローニングして塩基配列の確認を行った。現在、リン酸化の基質となるAli14の原因遺伝子のクローニングを行っている。 変異マウス骨髄よりのマスト細胞培養実験については、Ali18とAli14マウスの骨髄よりマスト細胞の培養を行って、マスト細胞の活性化による脱顆粒の指標となるマーカーの計測を行った。その結果、刺激に対する脱顆粒がAli14マウス由来のマスト細胞では有意に上昇していた。しかし、Ali18マウス由来の骨髄では変化が認められなかった。現在、これらの結果をもとにマイクロアレイ解析に用いるサンプルを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二重変異マウスを作製する交配実験において多数の交配実験が必要であるが、飼育スペースの制約があるために同時進行が不可能であることが判明した。結果を得た交配実験を縮小して、順次、新たな交配実験を開始している。やや予定より遅れてはいるが、現在の飼育スペースで予定期間内に結果が得られることは確実であることから、特に予定の変更は必要ないと考えている。骨髄よりのマスト細胞培養実験についても、同様の飼育スペースの問題で必要とする遺伝子型のマウスが十分に得られなかったことより、現在までパイロット実験の結果を得るに留まっている。しかし、共同実験先との連携等は問題なく行われており実験系に問題はないことが確認された。今後、交配実験を繰り返すことで必要な遺伝子型のマウスを確保できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、自己炎症性症候群のモデルとしてENUミュータジェネシスで得られた2系統(Ali18とAli14)の変異マウスを用いて、マスト細胞を介した炎症発症機構の解析を行っている。パイロット実験において、Ali18マウスでマスト細胞に依存した炎症性関節炎の発症が確認されている。同様の交配を継続して、今後、統計解析を行う予定である。また、Ali14についても同様の結果となるかを確認するために交配実験を行っている。これらの結果を軸として、骨髄よりのマスト細胞を培養してin vitroでの実験を開始している。それぞれの変異マウスより得られたマスト細胞の刺激に対する活性化について、脱顆粒の指標となるマーカーの解析を行っている。これら一連の実験においては遺伝学的な解析より、2つの原因遺伝子が同じシグナル伝達経路に位置することを予想している。しかし、マイクロアレイ解析などの実験結果によっては異なる経路において機能する可能性も考えられる。その場合は、それぞれの経路での差異と相互作用を詳細に解析する予定である。治療法開発としては、それぞれの経路を阻害する薬剤をカクテルとして使用するなどに方針を転換して対応する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本課題では複数の二重変異マウスの解析を計画していた。そのため、統計解析が可能な数の各遺伝子型のマウスを得ることが重要である。しかし、実験動物施設におけるマウス飼育スペースの問題で、複数の系統で同時に十分な数の交配を行うことができなかった。そのため、マウス飼育費を含むその他の支出が予定よりも縮小した。また、タンパク相互作用の実験において、コンストラクションの完成が遅れたために、培養細胞に関係する試薬や酵素活性を測定する試薬の物品費が予定よりも減少した。また、これらの実験の遅れから、実験補助に関する人件費にも影響があった。 二重変異マウス作製の飼育スペースについては、一組の二重変異マウスの解析の終了の際に順次、別の二重変異マウスの交配をオーバーラップさせて開始することで、効率的に飼育スペースを有効利用する予定である。このような方策により次年度の動物飼育費が増大する予定である。また、タンパク相互作用実験においても、既にコンストラクションが完成したことから、計画通りに培養細胞における遺伝子導入とそれよりタンパク質を精製して相互作用を解析する予定である。よって物品費においても使用額の増加が見込まれる。また、これらのサンプルの解析のため、人件費を増額させて実験や資料整理を行う予定である。
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