今年度は、microRNAとがん形質発現に重要なシグナルネットワークとの関わりを、Srcシグナル制御機構を軸に解明するため、がん形質と相関するmicroRNA について標的分子を解明しシグナル経路について詳細な解析を行った。そのため、昨年に引き続き1)がん形質と相関するmicroRNAの役割の解析、2)SrcシグナルによるmicroRNAの発現制御機構の解析及びを行った。その結果、1)については、Src活性化初期に発現低下が見られ、再導入によってがん形質を抑制するmicroRNAの標的遺伝子を探索したところ、Src自身とそのファミリー、またSrcの基質としてSrcがんシグナルを伝達するFerキナーゼであることを明らかとした。このmicroRNAは、Src活性の高い大腸がんの細胞株及び組織において発現が低下していた。さらにこれらのがん細胞株を用いて、このmicroRNAの機能を詳細に解析したところ、microRNAによりSrc及びFerの発現が抑制されると細胞接着斑の形成が不全となり、腫瘍形成や浸潤能の低下に寄与することを明らかとした。さらに2)については、これまでSrc活性化により発現が低下しSrcがんシグナルを抑制するmicroRNAについて、それらのSrc活性化による発現制御メカニズムを解析した。その結果、Src活性化に伴い、これらのmicroRNAは段階的に発現低下し、それぞれが標的分子の発現抑制を介して包括的にSrcがん化シグナルを抑制することが明らかとなった。
|