研究実績の概要 |
トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)の標的遺伝子で強力な腫瘍形成促進作用を示すTMEPAIとMafKが、どのような機序で働くかを解析するとともに、臨床診断に向けた橋渡し研究を行うことを目的とした。 ①TMEPAI, MafK, Gpnmbが足場非依存性増殖を誘導する分子機構。TMEPAIの作用機序として、すでに明らかにしているTGF-β/Smad経路の抑制とともに、AKTのリン酸化亢進とWntシグナルの抑制作用があることを新たに明らかにして、その分子機構の解析を進めた。また、TMEPAIにはa, b, c, d の4つのisoformがあるが、乳がんや肺がん細胞で発現しているのは主にisoform dであることを示した。MafKについては、上皮間葉転換とGPNMBの発現誘導により腫瘍形成を促進するが、GPNMBの種々の変異体の解析から、GPNMBの作用機序の一端を明らかにした。また、GPNMBに特異的に結合する特殊環状ペプチドを作製して解析した結果、GPNMBは平面培養時には機能していないが、スフェア培養での細胞増殖には必須であることが示唆された。 ②TMEPAIノックアウトマウス、C18orf1ノックアウトマウスの研究。TMEPAIとC18orf1のダブルノックアウトマウスの作製と脂質代謝への影響を検討したが、優位な差は得られなかった。また、これらのマウスとApc-Min/+マウスの交配による大腸腺腫の形成に対する作用に関する研究を持続している。 ③臨床病理学研究。ヒトGPNMB結合特殊環状ペプチドの蛍光ビデオ撮影での使用やFACS解析への応用を実施して、その特性を解析した。また、抗GPNMB抗体を用いて、ヒト膀胱がん、腎細胞がんなどにおける発現解析を行った。このほかにもがん幹細胞マーカーになる可能性を持つ分子を標的とした特殊環状ペプチドのスクリーニングを開始した。
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