研究課題
基盤研究(B)
lipopolysaccharide (LPS)を投与したBALB/c系統マウスにおいて、行動の経時的変化および脳内の組織化学的変化に関する検討を行なった。投与7日後に強制水泳試験で無動時間の延長が見られるという知見に加え、尾懸垂試験では、無動時間の延長がより明確に見られること、また投与後3日目から6日目まで抗うつ薬(セロトニン選択性取り込み阻害薬エスシタロプラム)を反復投与することにより、無動時間の延長が抑制できることが見出された。LPSを用いたうつ病の動物モデルは広く使用されているが、行動の変化を24時間程度ののちに評価するものが多く、また行動変化を抑制する薬剤は、LPSよりも前に投与されることが多い。今回われわれが得た知見により、今後はより妥当性の高い動物モデルを用いたうつ病研究が可能になると考えられる。形態学的研究のため、アストロサイト、オリゴデンドロサイトの標識物質、またFosBなどの免疫染色の条件も確立した。LPS投与後の、脳内での組織化学的変化については、多数の部位に関する解析の結果、脳内の特定領域でミクログリアの活性化が遷延すること、活性化の時間経過は部位によってかなり異なることが明らかとなった(現在、報告の準備を行なっている)。この所見に対応する画像所見を得るため、オーバーハウザーMRIを用いた解析に着手した。培養細胞系では、抗炎症効果を持つ可能性のある化合物が、ミクログリアの活性化を抑制する作用について評価を行い、その結果を動物モデルでも検証する準備を行なった。画像研究では、九大病院精神科で治療を行なっているうつ病患者の、diffusion tensor imagingのデータ集積を開始した。
2: おおむね順調に進展している
動物モデルの行動解析と組織化学、培養細胞、および画像解析と、予定したとおりの多角的な研究が行なえている。分子レベルの解析の準備については、予定より遅れている。
当初の計画通り、開発したLPS投与によるうつ病動物モデルについて、多角的に研究を進める。組織学的には、ミクログリアの活性化が顕著であった部位において、ニューロンや他のグリアの構成物質に変化が見られるかどうかの検討を中心に行なう。また、薬剤投与による行動への影響と、組織化学的な変化との相関にも注目する。組織化学的変化の分布も考慮しながら、行動と相関して変化する分子の検索も試みる。さまざまな抗炎症物質が、動物モデルにおいて抗うつ様効果を発揮するかどうかを検討する。培養細胞系では、動物モデルにおける組織化学的研究の結果も踏まえながら、動物モデルで生じている病態を追求する。臨床画像研究では、これに対応する臨床所見の検索を試みる。
予定していた機器の購入を延期したため。機器の購入を予定している。
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