研究課題/領域番号 |
25293252
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
神庭 重信 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50195187)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経炎症 / 動物モデル / ニューロン・グリア相関 |
研究実績の概要 |
動物実験ではひきつづき、lipopolysaccharide (LPS)を投与したBALB/c系統マウスにおいて、行動の経時的変化と脳内の組織化学的変化、さらにその変化を変容しうる薬理学的介入について検討を行った。LPS (0.8 mg/kg, i.p.)単回投与7日後の脳内において、さまざまな標識物質に対する抗体を用いて、持続的な組織学的変化の検索を行ったところ、線条体等の皮質下構造および内包等の白質構造でも、アストロサイトの標識物質とされているS100β陽性細胞が増加傾向にあるのを見出した(これまで、LPS単回投与による持続的な組織学的変化の報告は、はるかに高用量のLPS(2-5 mg/kg)についてのものがほとんどであった)。薬理学的介入については、マクロファージ系細胞の活性化阻害物質であるミノサイクリン投与がLPSの効果に与える影響を調べたところ、ミノサイクリン(50 mg/kg, b.i.d. x 3 d)は、LPS投与による抑うつ様行動を増強することがわかった。これは予想とは逆の結果であったが、ミクログリアの機能的多様性を考慮すると、非常に興味深いものと言える。 培養細胞系ではひきつづき、抗炎症効果を持つ可能性のある化合物が、ミクログリアの活性化を抑制する作用について評価を行ってきた。脳画像研究ではこれまでに、大うつ病性障害26名、双極性障害31名、健常136名について、拡散テンソル画像を撮像済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LPSの効果に対するミノサイクリンの影響が、予想とは逆であったために、仮説やその検証手続きについて、見直しを迫られたことが最大の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
ミノサイクリンが、抗炎症性(M2)ミクログリアあるいは周皮細胞など血管周囲マクロファージの活動を抑制することでLPSの効果を増強する可能性について、検証を進める(標識物質としてマンノース受容体などを検討している)。LPS投与が白質や大脳基底核を含む諸構造でS100β陽性細胞を増加させる可能性について、標本数を増やして有意性を確認し、時間経過の影響についても検討を進める。とくに、白質構造に持続的変化が生じている可能性について精査する。 培養細胞系では、これまで不十分であった抗炎症ミクログリアについても評価を試みる。脳画像研究では、とくに白質構造について、動物実験と対応する所見の同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費について、新たな実験補助員の雇用が延期になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は雇用予定。
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