研究実績の概要 |
動物実験では、lipopolysaccharide (LPS)を投与したマウスの脳におけるグリア系標識物質の発現について、免疫組織化学法による検索を行った。GFAP, S100-β, APC, oligo2, NG2, Iba1について標本を作製し、さまざまな部位で解析を行ったが、期間内に調べられた限りでは、これらの物質の発現量に持続的な変化が生じているという証拠を見出すことはできなかった。LPS投与の行動上の影響に対してミノサイクリンが与える影響について研究を進めたところ、ミノサイクリン投与(50 mg/kg, b.i.d. x 3 d)は尾懸垂試験において7日後も持続する抑うつ行動を惹起させたが、その効果はLPS (0.8 mg/kg, i.p.)投与の有無とは無関係であった。ミノサイクリンがマウスの行動に及ぼすこの効果の機序について、血液脳関門の損傷が関与しているという仮説を立てて、抗アルブミン抗体による染色を行ったところ、ミノサイクリン投与マウスで染色領域が増加する傾向がみられた。これを受けて、静注蛍光色素の脳内漏出量を吸光度測定することで、血液脳関門の機能低下の定量的評価を試みたが、期間内に結果を出すに至らなかった。抑うつ様行動に関連する脳内神経回路について、尾懸垂試験を行ったマウスでc-Fosを指標として行った解析の結果、抗うつ薬の前投与によって有意に賦活され、行動試験の結果と相関がみられるのは、外側中隔核と下辺縁皮質であることが分かった。ヒトを対象とする画像研究では、双極性障害38人、大うつ病性障害32人、健常者136人について,拡散テンソル画像を撮像し、解析を進めている。
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