研究課題/領域番号 |
25293393
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 隆史 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (50367520)
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研究分担者 |
瑞森 崇弘 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (10200023)
谷池 雅子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 教授 (30263289)
石垣 尚一 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (40212865)
三上 章良 大阪大学, キャンパス支援センター, 准教授 (60301272)
佐藤 文彦 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60632130)
矢谷 博文 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80174530)
吉田 篤 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90201855)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 睡眠 / ポリソムノグラフィー / ブラキシズム / 睡眠時無呼吸症候群 / 咀嚼 / 脳波 / 筋電図 |
研究実績の概要 |
本年度は、25年度に引き続きヒトおよび動物を用いた研究を行った。ヒトを用いた研究では、睡眠時ブラキシズムの臨床徴候を有する被験者および、それを有さない成人被験者において、ビデオポリソムノグラフィー(vPSG)検査施行しした。記録した被験者のうち20代の被験者31名のデータを解析したところ、睡眠時ブラキシズムの特徴であるリズム性咀嚼筋活動の発生数が高い群(14名)と低い群(17名)で比較すると、睡眠構築に大きな差を認めなかった。しかし、非リズム性の咀嚼筋活動発生頻度は、高い群より低い群で高かった。また、31名のうち、7名が軽度の睡眠時無呼吸症候群と診断できたが、2群でその比率に差がなかった。一方、中高年の睡眠時無呼吸症候群患者群(39名)のうち、睡眠時無呼吸症候群の重症度によって併存率が異なる結果を得た。したがって、睡眠時ブラキシズムと睡眠時無呼吸症候群にcomorbidityが、睡眠時ブラキシズムの症型分類項目の一つになりうることが示唆された。また、睡眠時無呼吸症候群患者の臨床症状の中に嚥下障害の徴候を認める一群があった(査読後、修正論文投稿中)。実験動物を用いた実験では、自然睡眠中のモルモットのノンレム睡眠中で、リズム性咀嚼筋活動が発生した。リズム性咀嚼筋活動の発生に伴い、脳波活動や心拍数が変化し、ヒトのリズム性咀嚼筋活動と類似した発現様相を示した。また、大脳皮質の連続電気刺激でリズム性咀嚼筋活動を誘発できることから、ノンレム睡眠中に皮質下行路を連続電気刺激すると、一定の比率でリズム性咀嚼筋活動を誘発できたが、その発生頻度は覚醒中より低かった。しかし、リズム性咀嚼筋活動誘発時には、脳波活動や心拍数の変化を認めた。このことから、咀嚼筋にリズムを有する活動の発現に、一過性の覚醒に伴う咀嚼リズム発生機構の活性化が重要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトの睡眠時ブラキシズムに関する本年度の研究計画に従って被験者のデータを集積しデータ解析を行い、異なるタイプの咀嚼筋活動の発現様相の差を睡眠時ブラキシズム患者とそうでない群で明らかにできた。また、睡眠関連疾患に関わる睡眠時ブラキシズムの発生特性の解析にも着手し、重症度によって発現頻度に違いがあることも明らかにできた。また、実験動物を用いた研究では,ノンレム睡眠中に発生するリズム性咀嚼筋活動が発生し、発現様相がヒトのものと類似していること、脳内電気刺激実験から、咀嚼リズム発生機構の賦活が、睡眠時ブラキシズムの発生機序の重要な役割を果たすことがわかった。以上のことから、26年度の研究計画は概ね順調に達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,終夜睡眠検査の実施とデータの解析,閉口筋バーストの同定とSBのスコアを行う.閉口筋活動phenotypeの発現様式と睡眠変数に基づく症型分類指標に応用可能な変数を探索する.その際、睡眠時ブラキシズムや睡眠時無呼吸症候群、レム睡眠行動異常症の診断を行い,comorbidityの詳細について、それぞれの疾患の重症度やタイプ、臨床症状などとの組み合わせを解析するとともに、筋活動の特徴やその分布様式との関連についても解析を行う.また、他の睡眠関連疾患とのcomorbidityが、異なるタイプの咀嚼筋活動の発生機序とどのような生理学的相関を有するか定量的に解析し、病態生理学的特性を明らかにする.動物実験では,実験的に誘発した睡眠中の閉口筋活動と睡眠状態の関係を調べ、複数の中枢部位の活動状態との機能相関と、咀嚼運動機構との解剖学的連絡を解析し、咀嚼筋中の閉口筋活動発現に関わる中枢神経機構を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度は、vPSG検査施行によるデータ収集を加速させ、検査施行数を増加させたが、睡眠時ブラキシズムの症型の多様性を調べるために、さらにデータ収集とデータ解析を加速させるためのマンパワーが必要であること、また動物実験では、26年度の成果で得たリズム性咀嚼筋活動の中枢神経機構の特性について詳細に調べるために必要な装置を購入すること、研究成果を国際学会等で発表する経費が必要であることから、繰り越しを行った。
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次年度使用額の使用計画 |
実験数と解析数の増加に伴う被験者への謝金、検査のための人件費、実験用装置の購入に充てる。また、国際学会での発表に関わる経費にも使用する。
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